長らく中国通信業界の話題の中心だった第3世代携帯電話(3G)のライセンスが,通信事業者の再編完了に伴って,ついに発給された。3Gライセンスが発給されるまでの経緯を振り返りつつ,3Gサービス展開後に考えられる中国通信市場の今後の方向性や課題などを解説する。

(日経コミュニケーション編集部)


町田 和久/情報通信総合研究所 主任研究員

 2009年1月7日,中国で3Gライセンスが発給された。中国移動(チャイナ・モバイル),中国電信(チャイナ・テレコム),中国聯通(チャイナ・ユニコム)の3社に対して,政府は各社の形式上の申請に基づき,それぞれ異なる方式(TD-SCDMA,CDMA2000 1x EV-DO,W-CDMA)の免許を交付した。

「通告」で方向性が決まる

 今回の動きは,2007年秋の中国共産党大会で,5年間の政策枠組みが発表されたところから始まる(図1)。2008年3月の全国人民代表大会(日本の国会に相当)で,これまでの通信分野の監督官庁であった情報産業部(MII)などが再編され,産業全体のICT化を主たる任務の一つとする大型官庁の工業・情報化部(MIIT,「部」は日本の「省」に相当)が設立された。一連の通信事業者の再編や中国の3G方式であるTD-SCDMAに対する国を挙げての支援強化などの動きは,ここから一気に加速した。

図1●中国で第3世代携帯電話(3G)のライセンスが発給されるまでの経緯<br>2008年3月の全国人民代表大会での行政機関再編以降,通信事業者の再編が加速し,3Gライセンスの発給に至った。灰色の囲みは関連する出来事。
図1●中国で第3世代携帯電話(3G)のライセンスが発給されるまでの経緯
2008年3月の全国人民代表大会での行政機関再編以降,通信事業者の再編が加速し,3Gライセンスの発給に至った。灰色の囲みは関連する出来事。
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 その後,2008年5月には,MIIT,国家発展改革委員会,財政部の3機関連名による「電気通信体制改革の深化に関する通告」(以下通告)が出され,通信事業者再編の具体的内容,3Gライセンス発給までの流れ,およびこれらに伴う幹部人事の大半が発表された。

 通告では「これらの再編が完了したのち,政府は各社に3Gライセンスを発給,フル・サービスを実現する」としており,これに基づきその後の各種手続きが各社で進められた。

 分割・合併作業は,香港の株式市場に上場している各社の上場会社間で,資本市場のルールに沿った形で進められた。2008年6月から10月半ばまでに中国聯通から中国電信へのCDMA網売却,中国聯通と中国網通の合併などが各社の臨時株主総会などの議決を経て完了。その後,前述以外の各社の親会社レベルで同様の作業が実施され,12月末までに作業がおおむね終了した。最後に残った中国聯通および中国網通の親会社間の合併が2009年1月6日,政府の認可発効とともに確定し,中国移動,中国電信,中国聯通の3社体制への移行が完了した(図2)。

図2●通信事業者再編と第3世代携帯電話(3G)ライセンスの状況<br>中国移動,中国電信,中国聯通の3社に再編され,各社に別方式の3Gライセンスが発給された。
図2●通信事業者再編と第3世代携帯電話(3G)ライセンスの状況
中国移動,中国電信,中国聯通の3社に再編され,各社に別方式の3Gライセンスが発給された。
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