セブン-イレブン・ジャパンは、ITを活用した小売業界の改革旗手として知られている。2004年からシステム開発を先導し、現在はセブン&アイ・ホールディングスの執行役員である佐藤政行さんは「革新の原動力は、ひとえに企業理念やカルチャーとそれを実践する体制にある」と言う。佐藤さんは、セブン-イレブンで店舗指導員を6年、その指導員のマネジメントを9年やってきた、現場を熟知している人だ。

 セブン&アイのシステム企画は9つのアプローチで進める。戦略分析、業務分析、業務定義、現行システム分析、ギャップ分析、ビジネスプロセス立案、情報技術の検討、システムモデル化、導入計画。これらを精緻に実施するために必要なのは営業・商品開発・店舗という現場との議論だ。

要所は、コンサルタントに委託しない

 2004年秋~2007年春にかけて構築した第6次情報システムでは、当時約1万700店におよぶ「ネットワーク再構築」や「会計システム再構築」「マルチメディア情報発信システム」「第6次店舗システム」「本部情報分析システム」「新型POSレジスター」、電子マネー「nanaco」を開発した。セブン-イレブンが他企業との優位性を持ち続けている理由である、仮説に基づき商品を発注して売れ行きを検証する「仮説検証型」経営がさらに精緻化され、発注者の経験差をITでカバーした。

 これらの改革は思いつきではできない。店舗からコールセンターに寄せられる要望、店舗指導員など営業部門から、毎週、現場改善提案が挙がる。これらを発注・品ぞろえ・情報分析など、カテゴリーごとに整理している。商品・物流・品質管理・店舗開発に関しても、これら情報を蓄積する。

 佐藤さん自身が大切にしているのは、システム構築のグランドデザインをコンサルタントに委託せず、自社でやることだ。同社のように、業務範囲が広く、利害関係者が多い仕事では、外部コンサルタントが仕事を100%理解することは困難。佐藤さんの言う「理解」には、利害関係者である店舗・従業員・パートナーなどの仕事に対する「思い」が含まれているように感じた。成長したいという思いを理解してそれを助けることが、システム最大の課題だと思った。

石黒不二代(いしぐろ ふじよ)氏
ネットイヤーグループ代表取締役社長兼CEO
シリコンバレーでコンサルティング会社を経営後、1999年にネットイヤーグループに参画。事業戦略とマーケティングの専門性を生かしネットイヤーグループの成長を支える。日米のベンチャーキャピタルなどに広い人脈を持つ。スタンフォード大学MBA