“いつでも、どこでも”利用するために生まれたノートPC。それが今、内部統制や情報漏洩対策の強化を理由に、持ち出しを禁止されたり制限されたりしている。日経コンピュータ誌とEnterprise Platformサイトが共同で、ノートPCの利用実態を調査すると同時に、持ち出し禁止の見直しにつながるテクノロジの最新状況を追った。

 Enterprise Platformではこれまで、「持ち歩けないノートPC」について数回にわたり取り上げてきた(関連記事1関連記事2関連記事3)。ノートPCは持ち歩いてこそ、その特性が生きる。しかし、持ち出しを禁止している企業の例も少なくない。現実問題として、ノートPCを持ち出せないIT技術者はどの程度いるのだろうか。

8人に1人がノートPCを持ち出せない

 実態を把握すべく、EnterprisePlatformでは2008年12月10日から2009年1月28日にかけて、ノートPCの利用実態についてのアンケートを実施した(関連記事)。このアンケートには1441件の回答が寄せられた。

図1●職場(常駐先を含む)におけるノートPCのモバイル利用に対する制限の有無
回答者の13%は、「個人用ノートPCの持ち込みも業務用ノートPCの持ち込みも禁止」という環境にある
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 結果、「個人用ノートPCの持ち込みも業務用ノートPCの持ち出しも禁止」との回答は、全体の13%に当たる190件あった(図1)。彼らは、社外では一切業務ができない、ということになる。

 持ち出し可能の場合でも、ほとんどは条件付きである。回答者の61%が「個人用ノートPCは持ち込めないが、業務用ノートPCは申請すれば持ち出せる」とし、13%は「所定の手続きをすれば、持ち込みや持ち出しできる」という。「特に規制はない」という回答も13%あった。

持ち出し禁止は企業の競争力まで削ぐ

 「持ち出し禁止」とした回答者が自由記入欄に書き込んだコメントには、業務効率の低下を嘆く声が散見された。「仕事のやり方が15年前に戻ったよう。業務効率が落ちた」「客先ミーティングにおいてパソコンで議事録を作成できないのはナンセンス」などである。

 システムインテグレータでモバイルサービスを担当するIT技術者は、「2005年に施行された個人情報保護法がきっかけで、情報漏洩を過剰に恐れる傾向が強まった」と指摘する。結果、業務効率とは別の次元で、リスクを徹底的に潰す企業が増加。その対策の一つが、ノートPCの持ち出し禁止として表出した格好だ。

 ノートPCの持ち出し禁止に象徴される“リスクを怖がりすぎるセキュリティ対策”に対しては、「企業の競争力そのものを削いでいる」と懸念する声が少なくない。

イノベーションとセキュリティは相反する。イノベーションを実現するには大量の情報が必要だが、セキュリティの強化は人と人の結びつきを分断する。現状のセキュリティをあと2年も続ければ、日本企業の国際競争力はゼロになってしまうのではないか。紛失して危ないのは手帳だって同じ。臭いものにフタ的な対応しか出来ない企業は結局競争力を削がれる。