サービス・イノベーションを進めるために、分野横断型のアプローチが重視されている。従来の業種業態や行政の区分は工業化社会の分類であり、売り手の立場から見た区分けと言える。だが生活者主体のライフスタイルや多様な価値観が広がるなかで、サービス産業こそ分野横断型の利便性と効率性を提供すべく革新が求められている。

 産官学共同でのサービス・イノベーションへの取り組みも始まり、筆者も経済産業省主導の「サービス産業生産性協議会」や文部科学省の「サービス・イノベーション人材育成推進委員会」に参加している。前者は製造業のノウハウをサービス産業に導入したり、経済学や社会学などに科学や工学の手法を加味したりしてサービス産業の革新を目指している。一方、後者は文系と理系に二分された旧来型の教育体系をサービス・イノベーションを軸に連携させ、同時に産官学連携による分野横断型のイノベーション教育プログラムの推進を目指している。

 どちらも緒についたばかりで既存の区分けをいかに分野横断的に連携させるかから議論がスタートしているが、いずれは分野間の融合や新分野の創出に発展することを期待したい。そして、分野横断型のサービス・イノべーションの実現には、プロセスの連携と融合を効率的に進め、質的な革新をもたらすための、オープンでリアルタイムなIT(情報技術)活用も必須である。