“いつでも、どこでも”利用するために生まれたノートPC。日経コンピュータ誌とEnterprise Platformサイトの共同調査では、IT技術者の13%が持ち出し禁止の環境下にあり、業務効率が落ちていると感じている。こうした状況を打破するための解決策についても、技術的な側面と制度的な側面のそれぞれから、多数のアイデアや寄せられ、また実際の運用が始まっている。
持ち出したいけれどルールは必要
職場におけるノートPCの持ち出し禁止あるいは制限に対し、回答を寄せたIT技術者の約64%が「セキュリティ対策を施し、モバイル利用を可能にすべき」とした(図1)。次いで多いのが「不便になるがセキュリティ上やむを得ない」とする回答で、約23%を占める。
「禁止や制限は当然である」とする“積極的規制派”は約5%。これに対し、「個人の責任で自由に使わせればよい」とする“規制不要派”も7%と少数派である。情報漏洩リスクを回避する手段を担保しつつ、持ち出しは可能なルールにしてほしい、というのが多数のIT技術者が望む環境だ。
では、どのような規制ルールを作ればノートPCを持ち出せる環境が実現するのだろうか。これに対して、技術的な解決策と制度的な解決策のそれぞれについて、多数の意見が寄せられている。
まず技術的な解決策としては、高速な第3世代(3G)携帯電話カードとシンクライアントの組み合わせを有力解とする声が多い。モバイルネットワークを利用して、持ち出すノートPCをシンクライアント化しようというわけだ。
例えば最大7.2Mビット/秒で通信できるNTTドコモの「FOMAハイスピード」は、実効速度で1M~2Mビット/秒が得られる。2008年末に人口カバー率100%を達成しており、提供エリアの整備も進んでいる(関連記事)。
シンクライアントが有望視されるが
上記のような仕組みを、実際に導入したり試験導入を始めているとのコメントも寄せられている。「シンクライントがあれば安全にノートPCを持ち出せるはず」という趣旨の書き込みは多く、40件弱に上る。
一方、シンクライアント導入済みの企業に在籍するIT技術者からは不満の声も聞こえてくる。その仕組み上、どうしてもレスポンスに遅延が生じるうえ、アプリケーションの利用に制限が出る場合もあるからだ。
元々、「設計・開発」職場では画像データが多いなどの課題があり、アクセス速度がネックになりシンクライアントに移行し切れていない。自席にあるPCに接続するシンクライアントの場合、社内のPCを24時間稼働させなければならず、環境対策とは逆行しているように感じる。ブレードPCに接続する方法も用意されているが、社内では「遅い」との評判が立っている。