日本ガートナーが今年3月18日に発表したCIO(最高情報責任者)が抱える次年度の課題の調査結果によると、コスト削減に対する意識が急上昇している。ここでのコスト削減にはビジネス構造を見直して企業コストを削減するという観点と、直截的にIT(情報技術)コストを削減するという観点の2つがある。

 前者はITだけでかなうわけではなく、まさに「集中と選択」も勘案しながら経営戦略に基づく経営コストの削減を原価や流通コストや販売管理費など総合的な見直しで取り組まなければならない。見直しモデルも情報システムによって運営されていくことからCIOに対するビジネス構造の見直し要請も強まっているものと思われる。

 後者は急激な景気低迷のなかで、経営上の急務な課題としてITコストの削減が浮上しているものとみられる。前回のコラムでも書いたように、ITのインフラ化に伴いコストは膨らむ一方だ。販売管理費に占める割合が小さくないために、経営者の目がITコストに向くのも必然である。収益を拡大して利益を得るか、コストを削減して利益を増やすか、結果として出る利益には変わりはない。しかし、右肩上がりで業績が伸びている時には、収益の拡大には前向きな経営者も、コスト削減には手綱が緩みがちである。危機感を肌身に感じるような昨今の状況になると、経営者の意識も変わって当然である。

 「前向きで楽しいコスト削減のススメ」ではITコストを対象にしているが、その考え方や実践手法は原価にも流通にも販売管理費全般にも通じるものである。例えばITコストの削減を進めていくと、プリンターやファクス、複合機、電話(固定・携帯)などのコスト問題に及んでいく。さらに、コピー用紙やそのほかの事務用品に波及していく。調達や管理を見直して適正化を図ることができる。