UQ WiMAXが従来の携帯電話サービスと大きく異なる点は,MVNOの参入を積極的に取り入れること。既にインターネット接続事業者(ISP),通信事業者,CATV事業者,メーカーなど,70社以上と協議を進めている。様々な業態のMVNOを取り込むことで,WiMAX網の用途拡大につなげていく。

 UQ WiMAXでは“垂直統合型”の携帯電話サービスとユーザーの登録方法が異なる。ユーザー自身がパソコンの画面上でオンライン登録し,その際にユーザーが利用したいMVNOを自由に選択できるのだ。携帯電話サービスでは,ユーザー管理に電話番号やSIMカードを使うため,販売店で加入手続きが必要となる。

 ユーザーは,家電量販店などで端末に認証IDやパスワードが記録されていない,いわば“白ロム”状態の端末やパソコンを購入する。初回アクセス時には,UQのポータル画面が現れる(図1)。ここで利用したいMVNOを選択し,ユーザー登録をする。その後,認証IDとパスワードが端末に書き込まれて,サービスが利用可能になる。

図1●オンライン登録時にはMVNOを選択できる<br>“白ロム”状態の端末を購入して接続をするとポータル画面が現れ,複数の選択肢の中から利用したいMVNOを選択できる。ユーザー情報などを登録すると,ネット越しに認証IDやパスワードが端末に記録される。
図1●オンライン登録時にはMVNOを選択できる
“白ロム”状態の端末を購入して接続をするとポータル画面が現れ,複数の選択肢の中から利用したいMVNOを選択できる。ユーザー情報などを登録すると,ネット越しに認証IDやパスワードが端末に記録される。
[画像のクリックで拡大表示]

 実際に,ユーザーがWiMAXに接続する際には,UQのシステムが,端末に記録された認証IDやパスワードを利用して,MVNOのシステム内にある認証や課金管理をするAAAサーバーに問い合わせる。正当なユーザーであると確認できれば,WiMAX網への接続を許可する。

海外や地域系とローミングも視野

 将来は,海外の事業者が運営するWiMAXサービスとのローミングも実現していく。UQの田中社長は「海外の事業者とローミング協定を進めており,2010年3月までには実現したい」と説明する。まずは利用する周波数帯が近い米国や韓国との検討を進める。その際には,1日だけ利用できる「ワンデイ」契約も用意する。

 ローミングの技術用件については,WiMAXフォーラムが定める仕様に沿った形とする。各事業者のネットワーク内にあるAAAサーバーが,ユーザー情報をやり取りする仕組みとなっている。

 国内では各地の通信事業者やCATV業者が運営する地域WiMAXとUQ WiMAXとのローミングも検討を進める。ただ,UQとしては地域WiMAXとのローミングは積極的になれない理由がある。地域WiMAXの中には,UQよりも安いサービス料金で提供する事業者が登場する見通しだからだ。

 海外ローミングのように利用する場所によって料金を明確に切り分ければ問題ないが「地域WiMAXの場合は,サービスの提供エリアの一部が重なっている」(UQの小池竜太コーポレート部門長)ためにそう簡単ではない。

 エリアが重なる場所では,通信速度を優先したいユーザーもいれば,料金の安さを優先したいユーザーもいる。様々な要望に応えたうえで,UQと地域WiMAXの双方のユーザーが納得できる接続方法を用意する必要がある。

 議論は難航すると見られているが,ローミング時の接続方法や価格設定については地域WiMAXを運営する事業者との協議を開始し,2009年後半には仕様を固めていく方針という。