UQコミュニケーションズが2月26日にWiMAXの試験サービスを開始した。7月1日からは有料サービスに入り,エリアを大阪や名古屋に拡大する。実効で15Mビット/秒というADSL並みの速度を実現する無線サービスとして,まずはパソコン向けのデータ通信で浸透を目指す。

 UQコミュニケーションズが開始した「UQ WiMAX」はIEEE 802.16e規格に基づく広域無線サービス。主な用途としては,オフィスや家庭からノート・パソコンを持ち出した際の無線データ通信を想定する。ノート・パソコン用のデータ通信としては,第3世代携帯電話(3G)網のデータ通信サービスが普及している。先行する競合サービスに対し,UQ WiMAXは「通信速度」,「料金」,「搭載機器の広がり」の3点を訴求し,ユーザー獲得を目指す。

次世代携帯電話の技術を先行実装

 通信速度は下り最大40Mビット/秒,上り最大10Mビット/秒。実効速度についても,電波の条件が良ければ下り15Mビット/秒以上,上りでは約4Mビット/秒が出る。実効速度が下り2M~3Mビット/秒程度の3Gサービスと比べて高速であることから,UQの田中孝司代表取締役社長は「UQ WiMAXは真のモバイル・ブロードバンド・サービス」と説明する(図1)。

図1●ADSLと同等の通信速度,無線LAN並みの普及を目指すWiMAX
図1●ADSLと同等の通信速度,無線LAN並みの普及を目指すWiMAX

 WiMAXは変調方式にOFDMAMIMOを採用することで,高速化を実現した。これらの技術は2010年以降に登場する携帯電話向けの次世代方式LTEでも使われる(表1)。ベースの技術は共通だが,サービスの導入ではWiMAXが先行した格好となる。

表1●UQコミュニケーションズによるWiMAXサービス「UQ WiMAX」の主な仕様
携帯電話の通信方式であるHSPAやLTEの仕様も併記した。LTEとモバイルWiMAXを比べると,拡散変調方式にOFDMA,データの多重方式にMIMOを採用している点などが共通する。
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表1●UQコミュニケーションズによるWiMAXサービス「UQ WiMAX」の主な仕様<br>携帯電話の通信方式であるHSPAやLTEの仕様も併記した。LTEとモバイルWiMAXを比べると,拡散変調方式にOFDMA,データの多重方式にMIMOを採用している点などが共通する。

 ただ,いくらピーク時の通信が速くても,利用できるエリアが十分でなければ快適に利用できない。UQがサービス開始当初の重点課題として掲げるのが,基地局の迅速な整備である。

 既に2月末には500以上の基地局を東京や横浜市,川崎市に設置している。7月の有料サービス開始時には,大阪,名古屋,京都,神戸にエリアを拡大する。その後は全国でエリア展開を進め,人口カバー率は2010年3月に55%,2011年3月に76%,2013年3月には90%を越す目標を立てている。

 ユーザー数が見込まれる東京などの都心部では,基地局設置の密度を高めていく。基地局から電波が届く範囲は,郊外では約1.5kmだが,都市部では500~600mと狭くして,アクセス集中に対応する。

 基地局の設置場所は十分に確保できているという。2008年3月にサービス終了したツーカーが利用していた場所を使うほか,au携帯電話の基地局と場所を共有する。新規で場所を確保するケースは少ないとしている。