米Microsoftは,なかなか効果的なテレビCMで新境地を切り開いた。米AppleとMacintosh(Mac)を名指しし,見事に痛いところを突いているのだ。1つめのCMは2週間前より放映され,Macの高い価格を攻撃している。2つめのCMは先週の終わりに始まって,PCからMacにスイッチする際に直面する選択肢の少なさと,Apple製品を購入する際に付きものの「税金」を追求する。

 今回のCMシリーズの効果は議論するまでもない。Macコミュニティで爆発している激しい反発をながめてみたところ,「Macは選択肢が乏しい」という事実を指摘したことが不明確な戦略のように扱われているようだ。

 はっきり書いておこう。Macは実際にPCより高い。Macは選択肢が非常に限られるうえ,機能よりも見た目が優先されている。

 Microsoftの1つめのCMは,「Lauren」氏が登場してMacの高価格を批判した。Laurenは,17インチ画面のノート・パソコンを1000ドル未満で買おうとしていたそうだ。ところが,最も安い17インチ版「MacBook Pro」ですら2800ドルするという情報しか得られなかった「Apple Store」をすぐ後にして,機能満載でたった699ドルの米Hewlett-Packard(HP)製PCを見つけた。購入価格は実に4倍の開きがあった。Macの価格を知った彼女は,「私はMacを使うほどクールじゃないから」と話していた。

 2つめのCMは,「Giampaolo」氏が性能や携帯性,バッテリ駆動時間に優れたノート・パソコンを探すという内容である。Macを薦められたGiampaoloは,「Macは処理能力よりも美学が優先されているんだ。僕はブランドに金を払うつもりなんてないよ。パソコンを買いたいんだから」と答え,1099ドルのPCを手に取った。MacBook Proの最安値モデルより1000ドル近くも安いPCだ。

 Apple支持者たちは,当然このCMの信用をおとしめようとして自分たちの足を引っ張り合っている。これは妙だ。これまで現実的な問題よりもイメージばかり気にしていたはずなのだから。ここで注目すべき部分は,広告の主張する内容ではない(もちろん,主張は明らかに正しい)。MicrosoftがついにAppleそのものをライバルと指名したことなのだ。

 Microsoftが以前に公開したよく練った「I’m a PC」(「僕はPC」)シリーズCMですらAppleやMacを明示せず,PCで得られる多様性に焦点を絞っていた(関連記事:Microsoft,新たなWindows Vista販売キャンペーンを開始Microsoftの広告キャンペーンで新展開,「Windowsで障壁のない生活を」)。何年も沈黙を守ってきたMicrosoftがとうとう本気を出し,これから起こりうるMacの方向転換に対応する,という極めて現実的な問題に取り組み始めた。Microsoftによると,新テレビCMシリーズはまだ新作を何本か流す予定という。