「日本の企業は景気が悪くなると、すぐコスト削減に向かう。失われた10年から何も学んでいない。こういう状況だからこそ、あえてSOAを『やってみろ』と言いたい」。ガートナージャパンの飯島氏は語気を強める。

 とはいえ、いきなりSOAを使った実プロジェクトに挑むのは大変だ。日本IBMグローバル・ビジネス・サービス事業ビジネス・ソリューション&SOAの高橋和子部長が勧めるのは「とりあえずESBで遊んでみて、基礎技術に直接触れてみる」。「IBM SOA Sandbox」というWebサイト(英語)から同社のESBなどを無償で体験できる。オージス総研が提供するオープンソース・ソフト(OSS)のESB「Mule」なども無償で使える。

 当然、一度取り組んだら長期戦の覚悟がいる。損保ジャパンの取り組みは1993年から足かけ15年に及ぶ。その結果、「契約照会」「試算」「約定」といった機能を共通化し、Webから利用可能にした。それでも損保ジャパン・システムソリューションの服部氏は「まだSOAレディ(ready)の段階」とみる。

 セガの松田氏はSOAのプロジェクトを振り返って、「苦しかったという感覚はない。新たなノウハウを作り上げる作業はとても楽しかった」と話す。情報システム部門にとってやりがいが大きい仕事であるのは間違いない。あなたの企業はSOAに本気で取り組むべきか。今こそ再考の時期に来ている。

未成熟の技術でも成長に不可欠
米シュナイダーナショナルのベイバ・ディモンド アプリケーション開発担当バイスプレジデント

 「確かに製品や技術は未成熟の部分はあるかもしれない。しかし、当社が成長を維持するにはSOAの採用が欠かせないと判断した」。北米最大のトラック輸送会社である、米シュナイダーナショナルのベイバ・ディモンド アプリケーション開発担当バイスプレジデント(写真)はきっぱりと語る。

 シュナイダーナショナルは2009年の稼働を目標に、米オラクルのSOA体系であるAIA(Application Integration Architecture)に基づき、基幹システムを再構築中だ。ERPパッケージ「Oracle E-Business Suite」、CRM(顧客情報管理)ソフトの「Siebel」、輸送業向けパッケージの「Oracle Transportation Management」をAIAの考え方で接続。輸送管理、受注管理、運転手の作業管理などを支援する。

 SOAを採用したのは「M&Aによる成長、さらに自社として成長するにはシステム全体の統合と標準化が不可欠だったからだ」とディモンド氏は話す。「ビジネスの変化があった場合にすぐ対応でき、システムの運用コストも下がることを期待している」(同)。

 同社のIT部門は300人規模で、当然システムは内製中心。うち90人がSOAプロジェクトに参画しているという。