名 称:Imagine Cup 2008 
開催地:Novotel Paris Tour Eiffel, Musee du Louvre 
URL:http://imaginecup.com/
名 称:Imagine Cup 2008
開催地:Novotel Paris Tour Eiffel, Musee du Louvre
URL:http://imaginecup.com/

 米Microsoftが主催する学生向けIT技術コンテストのImagine Cup。2008年の世界大会は,フランスのパリを舞台に,2008年7月3日から8日まで開催されました。今年で6回目となる熱戦の模様を,最も多くの応募チームが集うソフトウェア デザイン部門を中心にお届けします。

豪華絢爛ホールに集結,2チーム5人が日本から

写真1●学生たちの歓迎式典が行われたパリ市役所(hotel de Ville)の内装。とにかく豪華絢爛
写真1●学生たちの歓迎式典が行われたパリ市役所(hotel de Ville)の内装。とにかく豪華絢爛
写真/矢崎茂明

 天井まで数mはあろうかという余裕ある空間,壮麗なシャンデリア,ネオ・ルネサンス様式のゴージャスな室内装飾…。まるで宮廷のダンスホールのような格式あるセレモニーホール,それがなんとパリ市役所の中にありました(写真1)。ここに集ったのが世界中のIT巧者の学生たち。

 ノルウェイの学生がいます。シンガポールの学生がいます。エジプトの学生がいます。そして,日本の学生もいます。2008年のImagine Cupは,九つの部門に,100を超える国から20万人以上の応募がありました。予選を勝ち抜き,このパリ市役所にやってきたのは,61カ国約400人の学生たちです。開会のあいさつには,フランスのデジタルエコノミー開発担当大臣であるEric Besson氏や,Microsoftの米国とカナダを除く国際部門のトップJean-Philippe Courtois氏,Microsoftフランスでジェネラル・マネジャを務めるEric Boustouller氏らが登壇。学生を情熱的に歓迎しました。このImagine Cup 2008に日本から参加したのは,2チーム,合計5人。それぞれソフトウェア デザイン部門とアルゴリズム部門に参加しました。

 ソフトウェア デザイン部門は,与えられたテーマに沿ったソフトウエアを開発し,審査員にそれをプレゼンテーション形式で発表することで競います。このソフトウェア デザイン部門に日本代表として参加するのは,同志社大学のチーム「NISLab」,メンバーは,松下知明さん,中島申詞さん,加藤宏樹さん,前山晋哉さんの4人です。今年のテーマは「環境」。原文は「Imagine a world where technology enables a sustainable environment」です。日本語だと「持続可能な環境を支援するソフトウエアを想像せよ」という感じでしょうか。

 アルゴリズム部門は,与えられた数学的な問題全9問を24時間でどこまで高いレベルで解けるか,その優劣を競います。日本から参加するのは慶應義塾大学の高橋直大さんです。以下では彼ら日本代表の戦いを中心に,Imagine Cupの様子を見ていきます。

20分の発表を2回,勝ち抜けるのは約1/5

 フランス時間7月4日の午後2時,ソフトウェア デザイン部門の競技がスタートしました。

 ソフトウェア デザイン部門は,去年と少し審査方法が変わりました。これまではサッカーのワールドカップのように,六つのグループに分かれて,その中から上位2チームが準決勝戦に進出するというものでした。今年は,全61チームが2回,発表します。審査するのは各発表で4人,チーム当たり8人の審査員。結果は点数で付け,その点の高い順に上位12チームを選出する方法です。

 発表の時間は20分。その後5分間の審査員による質疑応答があります。発表と,質疑応答は,もちろんすべて英語です。抽選によるグループ分けの有利不利が出にくい方式になったといえるでしょう。とはいえ,いきなり1/5ですからタフな戦いです。

写真2●チームNISLabが発表する様子。写真は2回目の発表のもの。手前は審査員。部屋は12人ぶん程度のイスがある
写真2●チームNISLabが発表する様子。写真は2回目の発表のもの。手前は審査員。部屋は12人ぶん程度のイスがある

 日本代表,NISLabの1回目の発表を見に行きました。彼らは30分ほど前に指定された部屋に入って機材の準備を行い,本番を待つことになっています。観客席からはなにやらメンバー4人が慌てている様子が伺えます。なにかあったのでしょうか。そうこうしているうちに時間がきて,発表が始まりました(写真2)。

 彼らの作品名は「ECOGRID」。日本大会で優勝してパリ行きを決めたあと,研究室の指導教官である小板隆浩氏,企業メンターである株式会社ナルボの斉藤友男氏とともに,作品を大幅にレベルアップさせてきました。

 日本大会では照明機器の制御をメインとしていましたが,世界大会バージョンでは管理対象を家電にまで広げました。Webカメラを搭載して部屋に人間がいるかを検知し,強制的に電源をオフすることもできます。例えば,人がいて,DVDプレーヤーをオンにしたら,室内の照明を落としつつプロジェクタのスイッチを入れて,部屋から人がいなくなったら全部オフ,といった設定ができます。これらの設定は「LiveBroom」と呼ぶアイコンにまとめることができ,ほかのユーザーと共有できます。様々なLiveBroomを世界中のユーザーと共有することで,省電力に対するみんなの気付きを世界中に広げていこうというシステムです。ユーザー・インタフェースもWPFを利用することで,かなり洗練されました。英語での発表も,ネイティブスピーカー級の腕前を持つ前山さんによって自然にまとめられています。