名 称:The Student Day 2008 
開催地:HAL名古屋 
URL:http://www.microsoft.com/japan/msdn/sd/
名 称:The Student Day 2008
開催地:HAL名古屋
URL:http://www.microsoft.com/japan/msdn/sd/

 米Microsoftが開催する学生向けの技術コンテンスト「Imagine Cup」。2008年7月にフランスで,世界各国の学生を集めて決勝が開催されます。今年で6回目のImagine Cup,そのSoftware Design部門へ日本から参加するチームを決める日本国内最終予選が,2008年4月27日,名古屋で開かれました。

環境問題をITで解決する

 Imagine Cupはいくつかの部門でそれぞれ優勝を競います。Software Design部門は,もっとも人気があって,競争も激しい,Imagine Cupの中心といえる部門です。与えられたテーマに対して,問題を設定し,それを解決するソフトウエアを考え,プレゼンテーションします。

 Software Design部門の今年のテーマは「環境保護」。聞いたときからこれは難しそうだと感じました。環境という広くて,大きな問題に,学生たちはどのようなソリューションで切り込んでいくのでしょうか。

 この日本国内最終予選では,書類審査を突破した上位3チームが,制作したソフトウエアのデモを交えた,10分間のプレゼンテーションをします。これを見た5名の審査員が優勝者を決めます。優勝者は世界大会行きの切符と,賞金50万円を手にするという仕組みです。それでは戦いの様子を見てみましょう。

家庭の消費電力削減に世界規模で立ち向かう

写真1●同志社大学「NISLab」チームが発表する様子
写真1●同志社大学「NISLab」チームが発表する様子
写真/矢崎 茂明

 この日,3チームのトップを切って登場したのは同志社大学チーム「NISLab」でした。彼らが掲げたのはグローバル消費電力管理システム「ECOGRID」。家庭の消費電力削減をテーマに,それを世界規模で利用できるソフトウエアとして実装して,みんなで消費電力を削減していこうと考えました(写真1)。

 ユーザーは,照明や空調機器など,システムに管理されても差し支えない家電機器をECOGRIDに登録します。すると,このソフトウエアが持つモニタリング機能によって,それらの消費電力情報と,照明機器なら照度情報などが表示されます。この情報は,システムにログインしているユーザーなら誰でも見ることができます。

 個々の機器の消費電力に対して,「ユーザー基準」という値を設定できます。この基準を超えると利用状況を表示するマーカーは赤に変化します。それを見たユーザーは,「グローバル・コントローラ」という機能を利用することで,リモート操作で他人の家電機器のスイッチを切ってあげることができます。

 プレゼンテーションの中では,同志社大学の研究室の照明をシステム上からオフにするデモを見事に成功させました。あらかじめ設定しておいた基準値に基づいて家電機器を自動調整すること(例えば,照明機器の照度を下げる)もできます。

 このチームはプレゼンテーションのうまさが印象的でした。問題提起→それに対して考えた解決策→開発したソフトウエアの概要紹介→デモ→まとめと,流れが非常に論理的でわかりやすかったです。スライドも世界大会を意識してか,すでに英語でした。

 他人がわが家の家電機器を勝手に操作するというのは,少し恐いような気がします。一方で,他人の目にさらされないとムダに気付きにくいのも事実です。誰かの小さな気付きが,大きな電力削減につながる可能性を秘めたシステムといえそうです。

 一方で,少し納得いかない点もありました。彼らは“世界中の小さな計算機のパワーを集めてスーパー・コンピュータ以上の能力を発揮するグリッド・コンピューティングのアイデアを,エコロジーの世界に生かす”とコンセプトを紹介したのですが,今回のプレゼンテーションではそのコンセプトがあまり感じられませんでした。審査員からも「電力削減は普遍的なテーマなので“協調”が差別化ポイントならそこをもっと押してほしい」「このシステムを使えば地球規模でどれだけ電力削減が可能かを示す試算が必要」という声が上がっていました。