トップダウンで、かつ全体最適で進めるべき。既存資産を生かすべき。ビジネスプロセスと関連させるべき。ESBを使うべき――SOAには様々な「べき論」が付きまとう。

 もちろん理想型を知るのは大切だ。しかし、べき論を追求しすぎるとSOAのハードルが一気に上がってしまう。「ビジネス視点」で「サービス化」を目指すという最低線を押さえるのが、一歩目を踏み出す出発点となる。

ボトムアップ型SOAも可能

 「日本企業が得意なのはやはりボトムアップ型のアプローチ」。Web技術や開発に詳しいノークリサーチの岩上由高シニアアナリストが提案するのは、「ボトムアップ型SOA」だ(図1)。

図4●ボトムアップ型SOAアプローチの例
図1●ボトムアップ型SOAアプローチの例
ノークリサーチの資料を基に作成
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 最初のステップとして、現場の担当者にシステムに絡んだ業務上の課題を挙げてもらう。その際に現在や今後の課題、「こうだとイヤだ」といった小さなことまで「網羅的に課題を収集するのが重要」(岩上氏)。

 ステップ2では、システムが提供する解決策を俯瞰する図を作っておき、収集した課題を図にマッピングする。「ユーザーが人手でシステム間を仲介している」という課題だったら、システムとしては「プレゼンテーション層」で「連携・制御・統合」によって対応できる、などと判断する。その上でステップ3で、課題の解決に適する製品や技術を選ぶ。この例なら「ESB製品を入れる」などとなる。

 この手法では具体的なサービス化までたどり着かない上に、ステップ1で業務上の課題を挙げる際にITとどこまで関連づけるべきか、ステップ2の図をどう作るかといった課題もある。それでも、SOAへの一歩目としてハードルが低いのは確かだ。「ビジネスの視点で問題解決を狙っているかがポイント。SOAの範ちゅうにない製品を使うという結論でもいい。『SOAを採用しない』と判断したとしても十分意味がある」(岩上氏)。

 「思い込みが強すぎるのも良しあし」。SAPジャパンの松本潤 SAP Co-In-novation Lab Tokyoディレクターはこう話す。一例が柔軟性の実現。「SOAにより、すべてのシステムをバラバラにしなければならない、との思い込みが強い人が多い。それは不可能だし、そもそも“固い”ままでよいシステムをバラバラにする必要はない」。