名 称:Imagine Cup 2006 India 
開催地:The Ashok Hotel(インド,デリー),Jaypee Palace Hotel(インド,アグラ) URL:http://www.microsoft.com/japan/msdn/student/imaginecup/
名 称:Imagine Cup 2006 India
開催地:The Ashok Hotel(インド,デリー),Jaypee Palace Hotel(インド,アグラ)
URL:http://www.microsoft.com/japan/msdn/student/imaginecup/

 1年経つのは早いもの。今年も米Microsoftが主催する学生向けの技術コンテスト「Imagine Cup」の季節がやってきました。今年,2006年の舞台はインド。灼熱の太陽の下,インドの古都アグラと,首都デリーで,世界44カ国から集まった学生が,その発想と技術を競います。今回も,私こと吉田育代は,その戦いの様子を見届けました。もっとも競争の激しいソフトウェア デザイン部門を中心にレポートします。

スケールアップしている!

 インドはアグラにある会場のJaypee Palace Hotelに着いてまず思ったことは,去年の横浜大会より規模が大きくなっているということでした。6万5000名,100カ国以上の学生が予選にエントリしたとか,44カ国181名の学生がこの場所に参加したとか――数字では聞いていたのですが,会場でその事実を肌で感じます。大会にかかわっているスタッフの人数,取材に来ているメディア,どちらも増えています。

 例えば,メディア・ブリーフィングがあると聞いてプレスルームに行ってみたら,インドの報道関係者が多いだけでなく,世界各国からやってきたプレスもわんさか。このImagine Cup,年を追うごとに主催する側も,取材する側も,力の入り方が上がっているようです。

写真1●ソフトウェア デザイン部門にエントリした「Team Docterra」の4人
写真1●ソフトウェア デザイン部門にエントリした「Team Docterra」の4人
写真/矢崎茂明

 まず,日本から参加するチームをお知らせしておきましょう。今年は二つの部門で予選を突破しました。一つ目はソフトウェア デザイン部門にエントリした「Team Docterra」。大阪大学大学院生の中山浩太郎さん,前川卓也さん,岐阜大学の塩飽(しわく)祐一さん,鈴鹿工業高等専門学校の大居司さんからなる混成チームです(写真1)。もう一つは,ビジュアル ゲーミング部門。海城高等学校の竹井悠人さん,立命館大学の鈴木海靖さんからなるチーム「.PG」です。竹井さんは,国内予選まではTeam Docterraに入っていたのですが,同時にエントリしていたビジュアル ゲーミング部門での世界大会参加が決まったため,こちらに専念することになったのだそうです。

 次にソフトウェア デザイン部門の審査方法です。去年の横浜大会から変わりました。最初のプレゼンテーションは5分。これは自己紹介程度のもので,学生たちが発表の場と審査員に慣れるために行われます。次のプレゼンテーションは,4人の審査員を前に20分間。その後,質疑応答の時間が10分あります。この結果で,参加41チームの中から2回戦に出場するトップ12チームが決定します。

写真2●Imagine Cup最高責任者のJoe Wilson氏。学生を前にしたときはいつもにこやか
写真2●Imagine Cup最高責任者のJoe Wilson氏。学生を前にしたときはいつもにこやか

 2回戦に進んだチームは,別の審査員4人を前にして,もう一度プレゼンテーションを行います。この結果で最終戦に出場するトップ6が発表され,10人も入ればいっぱいの小さなブースから一転,今度は大会関係者すべての人が見ることができる大きな会場で最後のプレゼンテーションを行い,優勝チームが決定するというわけです。学生から見ると,去年より厳しくなったような気がします。

 米MicrosoftでImagine Cupの最高責任者をしているJoe Wilson氏に話を聞く機会があったので,なぜソフトウェア デザイン部門の審査方法を変えたのか聞いてみました(写真2)。すると,審査方法は第1回大会から毎年変えることにしているとの答え。大会を新鮮に保てる,というのがその理由です。学生は毎年その年固有の審査方法に適応しなければなりません。なかなか大変ですね。

グレードアップしている!

 Imagine Cupのソフトウェア デザイン部門は,毎年主催者がテーマを設定しています。高専のプロコンでいうと課題部門みたいな感じですかね。2006年のテーマはヘルスケア。人々がより健康的な生活を送るのに有効なソフトウエアを提案してくださいというお題です。

 日本代表チームは,それに対して電子カルテ・システムをぶつけてきました。2006年3月の国内大会で作品を見た私は,正直いって世界大会での活躍を期待していませんでした。作品の完成度が世界で戦えるレベルに達していなかったように感じたからです。

 しかし,1回戦のプレゼンテーションを見て,「これはいいところまで行ける!」と即座に思い直しました。作品は大幅に改良されていたのです。彼らは,電子カルテ・システムというアイデアをすっぱり捨て,世界的に大きな問題になっている医療ミスを防ぐシステムへとテーマを絞りこみました。

写真3●Docterraの動作画面例。Webカメラとビューアと組み合わせて,患者のカルテや利用できない薬などをリアルタイムに表示できる
写真3●Docterraの動作画面例。Webカメラとビューアと組み合わせて,患者のカルテや利用できない薬などをリアルタイムに表示できる

 Docterraと名づけられたソフトウエアは,医師や看護士の医療行為をヴァーチャル・ビューで支援するものです(写真3)。医師がヴァーチャル・ビューアを装着して患者のIDカードを見ると,病歴など患者に関する情報が空中に表示されて,診断の助けをします。また,シンプルなアイコンを使って医療のワーク・フローを表示したり,使用する薬剤の競合状況を示したりすることもできます。さらに,PocketPC上でXAMLによる3Dレンダリングを実現,患者に歯や骨の3D画像を見せながら病状を解説する機能も備えています。

 私がいいなと思ったのは,なにより視覚に訴えるシステムとしてグレードアップされていたこと。ヴァーチャル・ビューアという理系人間好みのギアが加わったところもグッドです。中山さんを中心としたプレゼンテーションも押し出しがよく,この先の展開が楽しみになりました。