キングジムのCIOの役割を担うキングジム常務取締役 物流本部長 兼 情報システム部担当の宮本英晴氏

 キングジムでCIO(最高情報責任者)を務める、宮本英晴常務取締役 物流本部長 兼 情報システム部担当は、1975年の入社以来、物流業務に携わる時期が長かった。物流効率化の一環として在庫管理のシステムを構築したのが、IT(情報技術)との出会いだという。だから「技術に詳しいわけではない。プログラミングはやれない」と恐縮してみせる一方で、「方向性や仕組みを考えるのが仕事だと思っているし、そのほうが楽しい」と力強く語る。

 その言葉通り、宮本常務は社内外でITを使った仕組みを作ってきた。1991年に稼働した販売物流システム「KINDS」(キングジム・インフォメーション・ネットワーク・データベース・システム)開発をプロジェクトリーダーとして指揮した。第3世代となって現在も活躍中のKINDSは、棚卸しの際の在庫誤差が全社で2007年度(2008年6月期)にわずか8000円、2006年度はゼロという高い精度を誇る。「現場の営業担当者がちゃんと入力してくれているから。長く使われているのは彼らの使い勝手をくんであるから」だという。

 社外でも文具の業界VAN(付加価値通信網)を管理する日本文紙データ交換機構(SEDIO)では専務理事を務めている。現在はメーカー、卸、小売り500社が参加する同機構の運営に立ち上げ当初からかかわってきた。

 最近気にかかるのは、20数人いる情報システム部社員の平均年齢が少しずつ高くなってきたこと。同部ではこれまで即戦力になれる技術を優先して中途入社の社員しか取っていない。「新卒や若手を3~4年かけて一人前にしてみたい」と抱負を口にする。

Profile of CIO

◆経営トップとのコミュニケーションで大事にしていること
・当社の社長は社内ブログを作らせて社員向けの日記を始めるような人ですから新しいシステムに対しても抵抗はありません。ただし、こちらもできるだけ平易な言葉を使って説明するようにしています。ERP(統合基幹業務)といったアルファベット3文字の用語も別の表現で言い換えるようにしています。社長やほかの役員も結局知りたいのは「その仕組みを導入すれば何ができるんだ」の一点なわけですから

◆ITベンダーに対して強く要望したいこと、IT業界への不満など
・「何でもできる」という言葉は信用していません。担当者がそう口にするベンダーは何もできないことが多い。一度、あるベンダーの営業担当者がいい加減な発言をするので腹を立てて、担当を別の人に変えてもらったことがありました。新しい担当者は分からなければ正直にそう話す人でした。結局、その社員は当社から大型案件を受注しました

 現在、付き合っているベンダーの担当者は、10年以上ずっと当社を担当してくれています。本当によく当社のビジネスを理解して提案してくれるので大変に楽です。その人は10年の間に平社員から管理職まで出世しています

◆普段読んでいる新聞・雑誌
・日本経済新聞
・日経情報ストラテジー

◆ストレス解消法
・地域でのボランティア活動に力を入れており、千代田区の青少年地区対策委員会に参加しています。最近、活動の一環で児童自立支援施設の見学に行き、非行に走る子どもたちの家庭環境について話を聞きました。そこで知ったのは、親子を結ぶ糸を最初に離してしまうのはたいてい無責任な親の方であること。景気の悪化を受けて企業による人員削減の報道をよく耳にしますが、会社も家庭もそこで生きる人たち同士のきずなが一番大事なんだと感じました。経営者は決して子どもである社員を切ってはならない、と再確認しました