経営者にとって、情報システムは頭痛の種になりがちだ。業務に必須だが投資に見合った効果が出るとは限らない。ほかの設備投資に比べて専門的で難解でもある。

 野村総合研究所で約20年間勤務した後に、人材派遣大手スタッフサービスのCIO(最高情報責任者)を務め急成長を支えた著者が、ベンダーとユーザー両方の視点から、“システム屋”の思考回路と、上手な付き合い方を説く。

 前々回(第5回)前回(第6回)で、私が“システム屋”と呼ぶITベンダー・システムインテグレーターの企業組織が掲げる「顧客第一主義」の2つの問題点について説明してきました。この問題は、金融システム事業部、流通システム事業部のように、顧客企業の“業種”ごとに部署を作ることに起因しています。

 こうした組織体制では、新しい情報システムを開発するアイデアを出す際に、偏りが出てしまいます。大手企業なら、システム屋から「どの画面を変えますか」「何という項目をデータベースに追加しますか」「ユーザー数は増えますか」と聞かれ、それを基に考えることになるでしょう。中堅企業なら「大手は最先端のPOS(販売時点情報管理)分析システムをやっていますよ」という“後追い”提案を出されるかもしれません。

 これは、世界経済や日本企業が置かれた環境がこれまで、“のんびり”していたからこそ、通用した提案でしょう。