図4は,サーバーBを兵庫県南部地震の地震波で加振したときの結果だ。実験B-1の事務机上に設置した実験では,サーバーAの実験とほぼ同様の挙動を示した。最初の数回の大きな揺れで,机上を滑って移動した。

図4●サーバーBの兵庫県南部地震波による加振結果
図4●サーバーBの兵庫県南部地震波による加振結果
事務机上では滑って移動し,タイル・カーペット上では一気に転倒した。サーバーAとほぼ同様の挙動を示した

 実験B-2の床上設置の実験では,最初の大きな揺れで,一気に転倒した。また,図4には示していないが,実験B-3は,サーバーを床上に置き,耐震固定器具を使って事務机に固定して加振した。その結果,加振によるサーバーの移動や転倒は発生しなかった。

 ここで,単純化した仮定の下で,転倒条件を考察してみる。床上のカーペットは摩擦抵抗が大きいので,加振時にサーバーの滑りが発生しないと仮定する。このとき,サーバーの角が支点となって,サーバーの重心に転倒方向の力(回転モーメント)が働く。その力が,サーバーの転倒を防ぐ方向の力(重力による回転モーメント)を上回ると,サーバーは転倒する。

 転倒方向の回転モーメントは,「重心の高さ×加振加速度×サーバー質量」である。重力による回転モーメントは,「サーバーの横幅÷2×重力加速度(1G=980gal)×サーバーの質量」である。つまり,サーバーBの場合,加振加速度をα,サーバー質量をmとすると,「19.5×α×m>20÷2×1G×m」の不等式から,転倒条件の加速度αを求めることができる。その結果,加振加速度が約0.5G(490gal)を超えると転倒するという計算になる。

 実際,サーバーが転倒した大きな揺れの加速度は500galを超えている(図3の振動台の加速度波形を参照)。転倒条件には,加速度だけでなく移動距離や速度も影響するので単純には言えないが,最大加速度818galを観測した兵庫県南部地震でサーバーが転倒するのは無理もないと言えるだろう。