部門や拠点で利用している小型のタワー型サーバー。その設置状況は万全だろうか。オフィスの片隅で,事務机の上や机の下に,無造作に設置されたサーバーは少なからずあるはずだ。そんな状態で,大地震が起きたらどうなるのか。サーバーが机の上から落下したり,転倒したりして,壊れてしまう可能性は高い。

 部門や拠点の小規模なシステムであっても,地震の被害でサーバーが停止したり,故障によってデータを損失してしまったりしたら,その損害は大きい。地震の多い日本にあっては,オフィスでの適切な地震対策が必要なことは間違いないだろう。

 今回,耐震実験の経験・ノウハウを持つリンテック21の協力を得て,過去の大地震を疑似的に再現した実験を実施。タワー型のPCサーバーが受ける影響を検証した(図1)。その結果,サーバーは事務机上で大きく滑って移動したり,落下したりした。床上に置いたサーバーは,大きな揺れで一気に転倒するなどした。

図1●兵庫県南部地震相当の加振により,事務机上に置いたサーバーは机上を大きく滑って移動した
図1●兵庫県南部地震相当の加振により,事務机上に置いたサーバーは机上を大きく滑って移動した
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兵庫県南部地震の地震波で加振

 今回,検証に使用したのは,大きさの違う2種類のタワー型PCサーバーA,B(図2の右)である。加振を行う振動台に,一般のオフィスで利用するタイル・カーペットを敷き,その上に事務机を置き,机の上と床の上にサーバーを設置して実験を行った。

図2●耐震実験の試験環境<br>大きさの違う2種類のPCサーバーを,事務机上またはタイル・カーペットの床上に設置して加振した
図2●耐震実験の試験環境
大きさの違う2種類のPCサーバーを,事務机上またはタイル・カーペットの床上に設置して加振した
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 サーバーの構成部品のうち,最も振動の影響を受けやすいと考えられるハードディスク部分に加速度センサーを付け,振動台で加振したときの加速度を測定した。

 今回の実験では,(1)1995年1月17日に発生した兵庫県南部地震の地震波と,(2)低い周波数から高い周波数へと連続的に変化する正弦波形「スイープ波」の2種類の振動波を利用した。兵庫県南部地震の波形は,神戸海洋気象台(神戸市中央区)で観測された地表波を使用。スイープ波は,2Hzから,毎秒0.01Hzずつ周波数が変化する波形を使った。

 実際の地震は,水平方向と垂直方向に3次元の揺れが発生するが,今回は,結果を分かりやすくするために,水平方向の1次元の振動で実験を行った。サーバーは,底面の長辺が振動方向と垂直になるように,つまり,振動で転倒しやすい方向に設置した。

地震波形や地盤の違いで影響は様々

 これから実験結果を評価していくに当たって,地震ごとの特性の違いには注意しておきたい。「地震波には様々な周波数,大きさの波が含まれており,構造物が受ける影響は地震によって異なる」(横浜国立大学大学院 工学研究院 社会空間システム学専攻 建築学コース教授 山崎裕氏)からだ。

 図1の右側のグラフは,日本で起きた様々な地震の加速度応答スペクトルを示したもの。加速度応答スペクトルは,構造物が地震の揺れにさらされたときにどのくらいの力を受けるのかを,構造物の固有周期ごとに示したものだ。例えば,今回使用した兵庫県南部地震の地震波の加速度応答スペクトルを見ると,0.5~1.0秒の固有周期の構造物が大きな力を受けるが,2003年5月に発生した宮城県沖地震では,その周期では大きな力を受けないことが分かる。

 また一つの地震でも,地盤の違いで場所ごとに地震波の特性は変わるし,機器を設置する建物の構造や設置階数によっても,地震波の影響は異なる。例えばNECは,サーバーの耐震基準を定義する際に,ビルの4~5階に設置したときの応答が,地表の2~3倍の加速度になると想定している。

 今回の実験は限られた条件下で行ったもので,上記のような影響要因は反映できていない。だが,実際の大地震と同等の揺れを再現した一つの結果として参考になるはずだ。以下,それぞれの検証内容を見ていこう。