“クラウド”のサービス品質を考える~鍵を握る仮想化環境の管理

 SaaS(software as a service)/PaaS(platform as a service),仮想化,そしてクラウド・コンピューティング――。国内に,こうした技術や仕組みに基づくサービスが次々に登場している。ネット企業やソフトウエア・ベンダーに加え,通信事業者も乗り出した。経済状況などを背景として,ユーザーの「所有から利用へ」という意識も強まりつつあり,こうした動きはますます加速しそうだ。

 ただ,これらのサービスを企業が使うには,まだ十分に議論されていない課題がある。その一つがサービス品質である。ユーザーにとってはネットワーク,ネットワーク機器,サーバー,ミドルウエア,アプリケーションが一体になって見える。パフォーマンスの低下や障害が発生した場合,問題の所在がユーザーには分からない。エンド・ツー・エンドのほぼすべてについて,問題個所の切り分けや原因分析はサービス提供者の手に委ねられる。

 ところが現状では,サービス提供者の管理体制は必ずしもユーザーの期待に応えられるものになっていない。システムを構成するコンポーネントごとの管理が主流だからだ。このうえ仮想化技術の採用が進むと,システムの管理はさらに難しくなる。クラウド型サービスの本格化に向けて,サービス・レベル管理の体制を改めなければ,ユーザーの満足を得られるサービスは提供できない。