今回説明するのは「演出」スキルの一つ,会議のファシリテートのコツだ。場を上手に作り,参加者に十分納得してもらったうえで合意形成を行なう方法を説明する。
様々な会議と様々なかかわり方
一口に会議といっても様々で,かかわり方や期待される役割は異なる(表1)。合意形成を目的とする場合と,情報共有を目的とした場合とではファシリテートの仕方も異なる。合意形成を目的とした会議の方が,より多くのコミュニケーションが必要な分,成功させるのは難しくなる。
会議に対するかかわり方 | 説明 |
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プロジェクトマネージャ/リーダー, あるいはオブサーバー |
プロジェクトの数だけ会議体がある。その分,会議に参加する機会は多くなる |
部署を代表する立場 | 定例報告会など,部署の長として場を取り仕切る。参加する会議も数多い |
全社横断コミュニティのリーダー または参加者 |
部署をまたがった社内改善プロジェクトや社内コミュニティの会議に誘われる機会が多い |
社外コミュニティの技術者 | 一人の技術者としてコミュニティの運営会議に参加することがある |
今回は,目的がぶれやすい部署や全社横断コミュニティにおける,合意形成を目的とした会議を想定し,話を進める(図1)。もちろん,プロジェクトや社外コミュニティでも同様の考え方で進めることはできる。

合意のためには段取りが必要
合意形成とは「参加者すべてが納得できている状態を作り上げること」である。そのためには,あらかじめ「そうなるような」作戦を立てておかなくてはならない。行き当たりばったりで会議に臨んでは,決まるものも決まらない。司会進行など当日の進め方も大事だが,会議を成功させるためには,十分な準備が必要なのだ。
段取りには参加者に対する根回しも含まれるが,今回はこのような話題は割愛し,会議の準備に絞って説明しよう。
ふりかえり手法を活用する
上手な段取りとは,役に立つアジェンダを短時間で作成することだ。会議の目的は何で,そのために何をどのような順番で行い,それぞれどの程度時間をかけるのかを決めていく。
普通にやると時間がかかる仕事なので,手引きがあると心強い。私がお勧めするのは,書籍「アジャイルレトロスペクティブズ 強いチームを育てる「ふりかえり」の手引き」だ。この本は,チームでのふりかえり手法をカタログ的にまとめたものである。アジャイルと銘打ってはいるが,XPやScrumなど,いわゆるアジャイルプロセスの知識がなくても問題なく読める。
フェーズ |
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1.場を設定する |
2.データを収集する |
3.アイデアを出す |
4.何をすべきか決定する |
5.レトロスペクティブズを終了する |
日本におけるふりかえり(レトロスペクティブズ)としては,「KPT」や「タイムライン」といったアクティビティが比較的知られているが,本書はチーム活動のあらゆるフェーズで役立つアクティビティを紹介している(表2)。
これら5つのフェーズのうち,特に「場を設定する」「アイデアを出す」「何をすべきか決定する」の3つは,どのような会議でも行なわれる重要なフェーズだ。以降,「アジャイルレトロスペクティブズ」を手引きに使った会議の段取りの手順を,実例に基づいて紹介していこう。