「ペアプログラミング」という言葉をご存知だろうか。2人の開発者がペアを組んで一つのプログラムを作成する手法で,アジャイル型開発プロセスである「XP(エクストリーム・プログラミング)」におけるプラクティスの一つだ。今回筆者は,同僚のY記者の提案を受けて,これを記事執筆に適用してみた。いわば「ペア執筆」である。

 ペアプログラミングでは,コードを書く開発者と,コードを書くのをサポートする開発者が,顔を付き合わせてプログラムを作成していく。ペアで作業するメリットとしては,(1)知識と経験の共有,(2)作業効率の向上,(3)モチベーションの維持,などがあるという(関連記事:「Web 2.0時代のソフトウエア開発手法 ペア作業で効率の全体最適化を図る」)。

 Y記者はこれまでにペア執筆を何度か行っているというが,筆者は初めてである。果たしてペアプログラミングのメリットをペア執筆でも体感できるのかどうか,興味があるところだ。

 今回のペア執筆では,文章を書く担当者と,文章を書くのを隣でサポートする担当者の二人が一つの記事を執筆するようにした。会話をしながら作業するので,周囲に迷惑にならないように会議室を使うことにした。と,筆者が会議室を予約した時点で,早くもY記者からダメ出しがあった。会議室を予約する際に予定内容として「入力作業」と書き込んだのだが,この呼び方ではモチベーションを維持しづらいということらしい。

 会議室には,それぞれのノートパソコンと,ディスプレイを1台持ち込んだ。今回ペア執筆の対象にした記事は製品の仕様をまとめるものなので,一方が製品の開発・販売元のサイトでニュースリリースや技術ドキュメントを調べてそれを口頭で伝え,もう一方がそれを文章にまとめる,という体制をとった。もちろん,文章をまとめる方も,記事執筆と並行して調べものも行う。さらに,記事を執筆しているエディタの画面は,ノートパソコンに接続したディスプレイに映して,相互に内容や表現をチェックする仕組みである。

 その日は,互いの役割を1回入れ替えて,合計90分程度の作業を行った。慣れていないせいもあってか,普段の記事執筆とは別のところが疲れた感じである。気になる作業効率については,単純に「執筆している局面の速度」だけを切り出せば,一人で記事を書くよりも速くなることはないだろうと感じた。

 ただし,トータルで考えると向上しているようにも思えた。「トータルで考えると」というのは,作業の間ずっと集中できる(せざるを得ない)こと,他の仕事の割り込みがないこと,分からないことがあった場合の作業の停滞が少なくなること,などをすべて合わせて考えると,ということである。また,二人がかりで記事を作成するので,品質を高めやすいとも感じた。

 もっとも,ペアプログラミングのメリットをそのままペア執筆に適用できる保証はない。作業の環境が変わったため新鮮に感じて,効率が上がったように感じたのかもしれない。やり方を試行錯誤しつつ,あと何度かペア執筆を試してみようと思う。