みなさん、こんにちは。当研究所では、グローバリゼーションをキーワードに、これからの企業基盤を考えています。前回は、「心・技・体」のうちの「心」=能力(人材)・組織を取り上げました。今回は、「技」=テクノロジについてお話しします。IT部門に求められることは、テクノロジの開発力や詳細熟知よりもむしろ、「テクノロジをどう使って、ビジネスの価値を高めるか?」を判断できる力です。

 本題に入る前に、前回のおさらいです。第3回で解説した「心」は、私の経験において、その完結に最もパワーを必要とし、かつ最も時間がかかる部分です。なぜなら、相手が機械でもプロセスでもなく、「人」の変化をうながす部分にほかならないからです。まして、生まれも育ちも違い、考え方も様々な人の集団に対して、“変化”というコンセンサスを築き上げることは、並大抵のことではありません。

テクノロジのみをうたう戦略は間違い

 「心」のプロセスの中で、私がまず行ったことは、“みんなが同意できる価値観”を見出すことです。例えば、「チームワーク」「議論しあえる環境」「他のメンバーの意見を腹に落としてから主張する」「否定は禁止」などなどです。これらが企業でいうところの、社是や企業価値、フィロソフィに当てはまるでしょう。

 ですから、ガバナンスの構成要素のうち、「心」のプロセスをうまくまとめ上げられれば、グローバリゼーションの山場は越したものと思っても良いほどです。グローバル戦略を実行する際に、テクノロジやプロセスの改革のみをうたう戦略をよく見かけますが、これは間違いでしょう。グローバリゼーションも、「人があってこそ!」推進できることだからです。

 みなさんも、現在ご自身が担当しているプロジェクトのアクションに是非、人の要素である、「創生すべき環境、スキルポートフォリオ、必須スキルなどの検証」を行ってみてください。きっと、新しい「心」の重要性に気付かれることでしょう。

 さて、いよいよ第4回の本題、「テクノロジ」について考えていきましょう。「やっとテクノロジの話だな。待ってました」なんて声が聞こえてくるような気がします。ですが、みなさんを失望させる前にお断りしておくべきことがあります。私がこれからお話しするテクノロジのお話は、「パワープラント型のクラウド機能の概要」とか、「新しいBI(ビジネス・インテリジェンス)ツールとSOA(サービス指向アーキテクチャ)の関連性」といったものではないということです。

「旬の技術を、旬に買える」時代に

 こうしたテーマにおけるテクノロジの詳細については、多くのWebサイトなどでも、多くの方々が分かりやすく解説されています。それに私は、テクノロジのすべてを、その概要以外には説明できません。ただ、みなさんに誤解を与えるといけないので、この意味するところを少し、お話しさせて下さい。

 私はIT部門を運営するに当たり常々、テクノロジの知識については、“浅く、広く”を目標に掲げてきました。昔と違い今は、それぞれの分野で素晴らしい知識とスキルを持つアウトソーシング・ベンダーが多数存在し、海外と比べると相当に質の高いサービスの提供を受けられるようになってきています。もし、IT部門が「旬の技術を、旬に買える」とすれば、各IT要員のテクノロジスキルは、従来とは少し違った角度から育てる必要があるのではないでしょうか。

 つまり、必要最低限のスキルは、ITの広い知識により、アウトソーシング・ベンダーと円滑にコミュニケーションでき、的確な指示を出すためのものになりあす。そして、テクノロジの知識とビジネスの需要を基に、自社に必要なテクノロジトレンドを模索できるといったスキルが必要になります。

 ですから、テクノロジの開発力や詳細熟知に比べれば、企業のIT部門に属する人材には、「テクノロジをどう使って、ビジネスの価値を高めるか?」を判断できるだけのスキルが求められていると思います。