Ustream.tv(以降Ustream)は,インターネットで誰でも生放送ができるサイトです。パソコンにUSBビデオカメラを接続してUstreamサイトにアクセスすれば,あなたも会議やイベントの生中継ができます。近くにネットワークがなくても,数Mbpsの程度のモバイル・インターネット接続サービスを使えば,どこからでも世界に向けて放送することが可能です。

 個人が利用しているだけでなく,先の大統領選挙のキャンペーンでObama候補(当時)が利用したことでも有名になりました。その後,就任演説などもストリーミングしています(UstreamのObamaチャンネル)。

 現在のユーザー数などは未公表ですが,2008年4月時点に公表したデータでは月間ユニークユーザー(視聴者)は200万以上,毎日8000件~1万件の放送があり,7万5000から12万の視聴者がこれを見ているとのことです(Ustream.tvの発表)。ただこれは約1年前の値ですので,いまではもっと増えているでしょう。

 最近,Ustreamでヒットしたのが柴犬の仔犬の中継です。可愛い仔犬がじゃれあったり眠ったりしているところを映した映像で,これまでに1400万回以上視聴され,2万6000以上のコメントが書き込まれています(WIRED VISIONの記事)。実際,筆者の回りの米国人でUstreamを知らないという人も,「柴犬の…」と言うと「ああ,あれね」と思い当たるというケースが何度となくありました。

 Ustreamは日本からもよく使われています。取材の際にきいたところ,日本のトラフィックは米国に次ぐ第2位とのことです。特に技術系勉強会やカンファレンスの中継では標準的なサイトになっており,ソフトウエア技術者の皆さんには特におなじみかもしれません。

 Ustreamは2006年夏,John Ham氏と,Brad Hunstable氏,Gyula Feher氏の3人により設立されました。UstreamのホームページにあるFounders Storyによれば,設立のきっかけは,Ustreamは海外に赴任した兵士が家族とよりコミュニケーションできるようにするためだといいます。

 Ham氏とHunstable氏はNew York州West Pointにあるアメリカ合衆国陸軍士官学校で出会いました。兵士は,電話またはインスタントメッセンジャーでしか家族や友人と連絡できず,一度に1人と話すことができるだけでした。兵士が同時に多くの人に語りかけられる方法を見つけたいと思い,Feher氏とUstream.tvの設立を決意したそうです。

 今回はシリコンバレーにあるUstream.tvの本社を訪問し,創業者の一人であり,CEOでもあるJohn Ham氏にインタビューしました。