英BTグループ テクノロジー&イノベーション
日本・韓国担当副社長
ヨン・キム 英BTグループ テクノロジー&イノベーション
日本・韓国担当副社長
ヨン・キム

 世界経済はますます悪化し,携帯端末関連の企業に対しても悪いニュースが報道されている。携帯電話端末の2009年の出荷台数は前年と比べて約10%落ち込むと予測されている。

 そんな中でスマートフォン市場は,例外的に活況を呈している分野だ。携帯端末ベンダーはこの市場に望みをかけているように見える。私の見たすべての調査が,スマートフォン市場は今後,急激に拡大すると予測している。例えば英ジュニパー・リサーチは,世界のスマートフォンの2008年出荷実績は1億5300万台だが,2013年には3億台に到達すると予想する。全携帯電話の販売台数の23%を占める計算だ。

利益率が高いスマートフォン

 スマートフォン市場は,最近までSymbian OSを擁するフィンランドのノキアが独占し,主な市場は欧州であった。それに対して米マイクロソフトのWindows Mobileとカナダのリサーチ・イン・モーション(RIM)のBlackBerryが追随していたが,その市場は企業向けに限られていた。

 だが,米アップルのiPhoneが2007年6月に登場したことで様相は一変した。iPhoneは後発ながらコンシューマ市場を開拓し,2008年には四半期ベースでBlackBerryを追い越した。2008年第3四半期にアップルは690万台を出荷,一方のBlackBerryは600万台だった。

 さらに携帯端末の売上高でみるとアップルは,ノキアと韓国サムスン電子に続く世界第3位の会社になった。米ストラテジー・アナリティクスの2008年第3四半期ワイヤレス市場データによると,アップルは端末販売台数では市場の2%を占めるだけだが,市場全体に占める利益率ではノキアの43%に次ぐ世界第2位の21%を占めているとある。だからこそベンダーはスマートフォンに注力するわけだ。

 スマートフォン市場には米グーグルもAndroidで参戦し,これから競争がさらに激化していくと予測される。

 今後の動きとして私が注目しているのは,これまで市場を独占していたSymbian OSが自陣営からほかの陣営への流出を食い止められるのか,グーグルのAndroidが市場へ与える影響はどうか,ほかの陣営がライセンス・フリー化しているのにもかかわらず依然としてライセンス販売を主軸としているWindows Mobileがそのままで生き延びられるか,といった点だ。

 端末ベンダーのシェア争いの行方にも注目している。世界の端末ベンダー上位5社(ノキア,サムスン,LG電子,ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ,モトローラ)のうち,スマートフォン分野で上位5社に入っているのはノキアとモトローラだけ。ほかの3社はアップル,RIM,HTCだ。市場が急伸するのに伴い,端末全体の上位5社の顔ぶれも変わるだろう。

 最後に一つ提言したい。日本のユーザーは数年前からスマートフォンの機能を使いこなしている。このアドバンテージを生かして,日本の端末ベンダーも世界のスマートフォンの市場に積極的に参入すべきである。

ヨン・キム(Yung Kim)
英BTグループ テクノロジー&イノベーション
日本・韓国担当副社長
 世界のほとんどの政府が経済刺激策にケインズの経済理論を応用している点に注目している。サッチャー元英首相やレーガン元米大統領の時代には貨幣政策に重点をおいたマネタリズムがブームであり,ケインズ理論は時代遅れと見られていた。マネタリズムは,段階的成長を見込む状況には適しているが,急激な不況下には適さない。ケインズ理論が今の経済状況に適応し,ドラスティックな変革をもたらしてくれるように願っている。