全日本食品のCIO(最高情報責任者)である竹嶋孝一・執行役員情報システム本部長

 全日本食品(東京・足立区)は、全国の約1800店の中小食品スーパー・小売店のボランタリーチェーン「全日食チェーン」を運営する。2008年8月期の売上高は870億円。個人消費低迷の逆風が吹く中で、2009年8月期も大幅な増収増益を見込む(関連記事)。

 CIO(最高情報責任者)を務める竹嶋孝一・執行役員情報システム本部長は、「ここ数年のシステム投資の効果と、新しい商品施策がうまくかみ合った」と話す。具体的には、600~1000品目を売れ筋商品として重点的に売る施策「新・商品施策」と、これを支援するために2008年前半までに本格稼働させた新基幹情報システム「HEART-ONE」が原動力になっている。

 ボランタリーチェーンは独立した商店の連合体で、品揃えや売価などは加盟店に任される。従来は、全日食本部でのデータ分析が不十分で、加盟店が売れ筋商品を十分に品揃えできていないことがあった。HEART-ONEでは、「死に筋」商品をカットし、売れ筋商品を最適価格で売る案を加盟店側に提示。自動発注機能も備えて、売れ筋商品を欠品させず確実に売れる体制を作った。旧システムは「ZIC(全日食インベントリー・コントロール)」という名前で、その名の通り、本部の在庫管理や仕入れ・卸売り機能に重点を置いたものだった。加盟店支援機能が弱いという課題があり、新システムで改善を図った。

 竹嶋氏はシステムエンジニア出身で、2004年に全日食に入社し、ZICからHEART-ONEへの刷新を任された。それまでに流通業のシステムの経験はない。「ボランタリーチェーンは流通業の中でもかなり特殊で、業務内容を覚えるのにかなり苦労した」と振り返る。現場の社員に情報システム本部に参画してもらうなどして、業務知識を補った。こうした経験から、「CIOを務めるには、IT(情報技術)やITベンダーとの関係作りなどを理解していることが不可欠。CIOが“ITの素人”では、結局ベンダー任せになってしまう」と主張する。

Profile of CIO

◆経営トップとのコミュニケーションで大事にしていること
・大局的な視点で考え、何を求められどういう回答を期待されているのか、常に考え、心掛けています

◆ITベンダーに対して強く要望したいこと、IT業界への不満など
・とかくユーザー側に立った提案を忘れがちであること、企業の思惑だけでビジネスが成り立たないことを意識するべきだと思います。特に外資系ITベンダーの日本法人にこの傾向が強いと感じています。自社の企業構造、ビジネススキームを前面に押し出してユーザーを顧みないスタンスには不満です

◆普段読んでいる新聞・雑誌
・新聞よりは、インターネットでの情報収集を重視しています。その中で興味のあるものがあれば、さらにアプローチして本格的な情報の収集に努めるようにしています

◆最近読んだお薦めの本
・『オバマ・ショック』(越智道雄・町山智浩著、集英社新書)

◆仕事に役立つお薦めのインターネットサイト
・ITpro
・@IT

◆情報収集のために参加している勉強会やセミナー、学会など
・日本スーパーマーケット協会主催の勉強会
・ITベンダー主催のセミナーやフォーラム

◆ストレス解消法
・自宅で薫製やオリジナルレシピの料理を作り、ホームパーティーを開催することです