米IP Devices代表
岸本 善一

 米国のデータセンターにおける重要課題の1つは,いかに手頃な価格で電力の安定供給を確保することである。連載の第8回と第9回では,電力のムダはどこから来るのかという現状を解析し,電力効率向上への具体的な取り組みへと話しを進める。実際には,次の5つの項目について述べる。

1.データセンター内の電力消費の現状
2.データーセンター内での配電方法とその効率性
3.IT機器のPSU(電源装置)の効率化
4.クリーンエネルギーの利用
5.電力管理による系統立てた電力消費削減のアプローチ

 今回(第8回)は上記の1~4について解説し,次回(第9回)では5の電力管理による消費削減の具体的なアプローチについて詳しく述べる。

冷却設備が電力消費の3割を占める

 最近,データセンターの専門家の団体であるAFCOMのコンファレンスで,AmazonのJames Hamilton氏が発表したデータによると,データセンター内の電力消費構成は図1のようになっている。

図1●データセンター内の電力消費構成
図1●データセンター内の電力消費構成
 IT機器による電力消費は全体の6割程度。冷却設備による電力消費が3割以上を占める。出典:AFCOM James Hamilton。

 このほか,Emerson社も上記と同じようなデータを報告している。これらの結果からわかるように,電力消費の削減に取り組む場合には,まずIT機器と冷却に焦点を当てることだ。

 IT機器の方は,エネルギー効率を上げることと,電力消費を抑えることに対策を施すべきである。この2つは同じではない。前者は機器そのものの効率を上げる取り組みであり,後者は必要性の精査や仮想化によって機器そのものの絶対数を削減する取り組みである。

 次にインパクトが大きいのは冷却だ。コールドアイル/ホットアイルの設定やアイルキャッピング(通路内の暖気を封じ込めること)などが盛んに議論されている。冷却の効率を上げることも重要だが,IT機器との連携で最低限必要な冷却能力だけを使用することで,電力消費を削減できる。