情報サービス産業協会(JISA)は2月13日、「中小企業の会計に関する指針」の改正に関する草案に反対する、意見書を提出したことを明らかにした。同指針の改正は、日本公認会計士協会や日本税理士会連合会など4団体が1月16日に公表したものだ。

 草案には、中小企業でも「受注ソフトウエアは、成果の確実性が認められる場合には工事進行基準を適用する」という部分がある。同指針に強制力はない。しかし、非上場で外部監査制度の存在しない中小企業は決算書を、この指針に従って作成することが推奨されているため、改正の影響は大きいと、JISAは判断した。「中小企業に対して、工事進行基準を一律に適用するのは不適切だ」とJISAは述べている()。

図●「中小企業の会計に関する指針」の草案と、草案に対するJISA(情報サービス産業協会)の意見
図●「中小企業の会計に関する指針」の草案と、草案に対するJISA(情報サービス産業協会)の意見

 JISAの田中岳彦主任調査役は「草案がそのまま指針になると、中小のITサービス企業に無用な混乱を招くと考え、意見書を提出した」と説明する。

 工事進行基準を適用するには、「精緻な見積もりの作成」や「進捗の把握」といった要件を満たす必要がある。「中小企業は、もともと社内に人材が少ないうえに、信頼性のある原価見積もりを作成するための体制を整備することは財政的にも難しい。適用することに意味があるのか」と田中主任調査役は話す。

 JISAは工事進行基準の適用についての規定を設けることで、中小のITサービス企業へ悪影響が生じることを危惧している。例えば、受注先選別の材料にされたり、進捗管理のために必要以上の情報を提出させられたりする可能性があるという。

 法人税法との関係があいまいだという点もある。法人税法は、工事進行基準を強制適用する案件を定めている。期間が1年以上、請負金額が10億円以上の案件だ。

 田中主任調査役は、「中小企業の場合、自社が契約する案件がこの規模になることはほぼない。法人税法で対象になっていないのに、決算書を作成するための指針で規定すれば、混乱するのは当然だ」と語る。

 主に上場企業が対象となる、受託ソフトウエア開発で工事進行基準の適用を定めた「工事契約に関する会計基準」でも、法人税法との関係は議論になっていた。

 同指針の改正について、日本公認会計士協会は、「上場企業が順守する会計基準と、中小企業の会計指針との整合性を取ることが狙いだ」と説明する。この方針に沿って、受託ソフトウエア開発について、中小企業にも工事進行基準を適用することにしたわけだ。

 同指針は早ければ2009年4月にも、日本公認会計士協会など4団体が成案を公表する予定である。