本研究所では、日本と海外のIT技術およびその利用方法を比較し、両者の間にある格差について考えていく。グローバル化の必要性が盛んに叫ばれる日本だが、グローバルなサービスを提供しているITサービス企業は、それほど多くないのではないだろうか?特に、“日本発”と呼べるようなインターネットサービスは、さらに限られる。世界に開かれたインターネットを前に、サービスの提供先を日本国内に閉じる必要があるのだろうか。

 グローバル化の必要性が盛んに叫ばれる日本だが、グローバルなサービスを提供しているITサービス企業は、それほど多くないのではないだろうか?特に、“日本発”と呼べるようなインターネットサービスは、さらに限られる。世界に開かれたインターネットを前に、サービスの提供先を日本国内に閉じる必要があるのだろうか。

リーマンが投資してきた企業を横串し検索

 例えば、世界を意識したときに、「世界中にある会社の企業価値を評価できたらなぁ。それらを比較できたらいいなぁ」と、思われたことはないだろうか?そんな希望を実現するために、当社が始めたサービスに「ユーレット」がある。今回は、ユーレットを題材に、インターネットサービスを実現している、テクノロジの世界を紹介したい。

 ユーレットとは何か?みなさんは、米ヤフーや米グーグルのサービスを使って、企業を検索した経験をお持ちだろう。ただ、これらの検索サイトで企業を検索すると、プレスリリースやブログなど様々なサイトが引っかかってくる。それらをまとめ直し、さらに企業の有価証券報告書だけを焦点に、マッシュアップすることが、ユーレットが提供するサービスである。

 従って、ある企業の財務体質などを知りたければ、ユーレットで会社名を入力すればある程度のことが分かる。例えば、「破綻してしまった米リーマンブラザーズがどの上場企業にいくら投資していたか」を横串し検索できる。また、ある会社がどのくらいの資産を持ち、売り上げと利益がどの程度の規模があるかを、円グラフで見ることができる。

 いつの日か近い将来には、世界中の企業をマッシュアップできるようにする計画だ。グーグルと米マイクロソフトと、ソフトバンクをワンクリックで比較できるサイトを提供したい。それには、英語や日本語など多言語でのサービスを考慮する必要がある。現時点で提供できているユーレットの分析サービスは、完成度としてはまだ1割程度だと考えている。ただ、テクノロジの側面でみれば、その完成度は決して米国企業などにも後れを取っていないとの自負がある。

目指す情報の場所を想定し負荷を軽減

 ユーレットにおいて、必要な企業データを取得してから表示するまでの主なプロセスは以下のようになっている。当然ながら、これらのプロセスを設計するための大前提として、財務諸表を読み解くノウハウを利用している。

(1)クローラーが上場企業のデータを取得する
(2)取得したデータを解析し、データ同士をひも付けたうえで、データベースに格納する
(3)データをインタフェースデザインに組み込んで表示する

 ユーレットではまず、(1)のクローラー技術によって、有価証券報告書などの開示書類を電子開示している「エディネット(EDINET:Electronic Disclosure for Investors' NETwork)」など、対象となるサイトから、上場企業約4000社に関する情報を収集する。このとき、すべてのコンテンツを一律に集めるのではなく、目的の情報が掲載されている場所をあらかじめ想定して取得するようにしている。これにより、対象サイトに与える負荷を軽減し、短時間に効率よく情報を集められるのだ。

 収集した情報は、(2)のデータ解析技術によって、必要なデータのみを抽出する。ここでのポイントは、解析技術の精度である。また、それぞれのデータは単なる文字列や数字としてではなく、それぞれがもつ意味や属性によって分類しれた状態でデータベースに格納する。(3)の段階では、これらの情報を必要に応じて抽出し、グラフや表の形式を含め、ユーレットのページ上に整理された状態で表示する。