ビジネスとITの摩訶不思議な世界を“創発号”に乗って旅する匠Style研究所。第3回までは、要求を題材にしてきました。今回は、要求合意の過程で発生する「提案」という行為や、その背後にある「アイデアの創出」について、僕が技術顧問をしているリコーソフトウエア内での“雑談”をベースに考えてみます。さあ、“創発号”に乗ってビジネスとITの摩訶不思議な世界に乗り出しましょう。

 要求を合意するためには、その課程において「提案」という行為が伴います。この提案は、ビジネスオーナーや業務担当者、IT担当者の区分けなく出てきます。提案を組み合わせたり分解したりすることでチューニングし、要求としての形を作り上げていきます。

 これからご紹介するのは、僕が技術顧問をしているリコーソフトウエア内での雑談の内容です。提案という行為や、その背後にあるアイデアの創出などが話題です。登場人物は、リコーソフトウエア元社長の高田さんと、ソリューション事業部センター長の菅生さん、ソリューション事業部副センター長の山下さんです。「社員の提案力を高めるためには」が、雑談のきっかけです。

 これは対談ではなく雑談です。ですから、突然ぶっ飛んだ話にもなりますし、体系立てられてもいません。しかし、僕の記憶の中から掘り起こされた、それほどに印象に残った“貴重な雑談”なのです。

「提案力がない」とはどういうことか?

高田:最近よく、「社員の提案する力がない」と言われるんだけど、本当に提案する力がないのだろうか?私からすると、お客様には様々な局面で社員は提案していると思うし、例えば、事業部会議の中でも部長達は提案している。「提案力がない」といわれる根拠がどこにあるのか。また、提案力がないというときの提案とは何なんでしょうかね?

山下:これまたスッゲーことから質問しますね。高田さんは質問しながら解を求めるのがうまい。まさにサポーターそのものです(笑)。

萩本:いやホント。高田さん、面白い質問ですね~(笑)。提案とは何か?う~ん、難しい話しですね、実際に社員の皆さんはしっかり顧客に提案しているわけですから・・・。

高田:いやあ、そんな。単に知りたいと思って質問しているだけですよ(笑)。

菅生:まず、提案の回数という問題ではないと思いますよね。顧客が求めている時に、提案としてバシッと刺さるものを出しているか、あるいは顧客の印象に残る提案が出せているかどうかだと思います。そういう意味で、提案力がないと思われる現象の根本には、的を射た提案が出ていない、あるいは、顧客にとって「よい提案だ」という印象が薄いということがあるのだといます。

高田:どうして印象が薄い提案しか出せないのだろうか?私はね、ここで提案ということを単に提案書というものだけに留めているわけではないんですよ。私から見て、「提案力がない」と言われる意味が分かるケースはあるんです。システム開発プロジェクトが大きく遅れてしまうときのことですが、お客様からは「どうしてあのとき、開発側として提案してくれなかったのか?」とか、言われますよね。根本的な問題を解決するために、もっと早く提案してくれればよかったのにと。