快進撃を続けてきたシステム販売大手、大塚商会の頭上に暗雲が立ち込め始めた。03年度から07年度までの5期連続の増収増益から、08年度(12月期)は、売上高が前年比0.5%減の4671億円、営業利益も同9.9%減の270億円の減収減益に転じた。大塚裕司社長は「社長になって初めての減収だった」と悔しさをあらわにする。売り上げ、利益などすべての項目が目標未達だった。ユーザー企業1社当たりの購入単価も下がり、社員1人当たりの売り上げ(単体)は同2.4%減の6489万円、営業利益は同11.2%減の374万円。06年度並みの数字になった。

 「09年度の数字はもっと悪くなりそうだ」と大塚社長は09年2月3日の08年度決算説明会で語り、09年度も減収減益(売上高4470億円、営業利益185億円)を予想した。期待値が高かったからか、発表翌日の株式はストップ安になるほどだった。

 01年の社長就任以前から、大塚社長はさまざまな社内構造改革に取り組み、強固な経営基盤を作り上げてきた。ITを活用して前線の営業を支援する仕組みは最も効果を上げ、1人当たり売り上げと営業利益は毎年、改善するなど生産性を着実に向上させた。

 「だが08年秋以降、市況が激変した。IT活用の二ーズは潜在的に高いものの、先行きが不透明ななかで、IT投資を抑制したり、先送りしたりする傾向が顕著になってきた」(大塚社長)。既に第3四半期(7月~9月)から買い控えが強く出てきたり、リースを通らない中小企業ユーザーが出てきたりするなど、案件獲得が難しくなっていたという。売上高は、第3四半期は前期比微減だったが、第4四半期では6.7%のマイナスだった。

 こうした状況で、大塚商会はどのような戦略を繰り出そうとしているのか。そのヒントは営業利益率では5.8%を確保したことにありそうだ。

 07年度から0.6ポイント下がったものの、システム販売会社のなかでは高収益である。最大の理由は、保守などのサービス・サポート事業、つまりストックビジネスが好調だったからだ。

 売り上げの約60%を占めるパソコンやPCサーバーなどのハード/ソフト販売(SIという項目で示している)が08年度通期で5%近く落ち込む一方、サービス・サポート事業は6.1%増と堅調だった。大塚社長は「改めてサービス・サポート事業の必要性を感じた」と言う。

 サービス・サポート事業の売り上げの半分近くを占めるのはオフィス用品の通販システム「たのめーる」だ。活用ユーザーは62万口座に増え、売り上げは08年度(単体)に約900億円に達した。

 たのめーるから派生するサービスも出てきた。たのめーるのITインフラを活用した調達ASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)サービスの「たのめーるプラス」だ。企業に必要なものをさまざまな取引先からインターネットで調達できるASPサービスで、ユーザー数は2割増え168社、売り上げも50%増えた。

 こう見ると、たのめーるのITインフラを使ったサービス・サポート事業の拡大こそ、大塚商会の今後の成長の源泉といえそうだ。つまりは、ITプラットフォーム事業の強化である。

 同事業を強化するためか、09年1月にはソニーの指静脈認証技術を使う認証サービスも発表した。セキュリティが叫ばれる時代にあって、個人認証の必要性が高まっていることに対応した。

 このほか大塚商会は、ITを含めた前向きな投資を計画している。09年度に販売管理費を41億円増の844億円も投入し、2010年度以降に成果を出したい考えだ。営業強化に向けた投資とみられる。「次なる成長に向けて準備する」(大塚社長)。

 中小企業市場の開拓もさらに強化する。「街の電器屋さんのように存在になりたい」と大塚社長は話す。同市場を得意とする大塚商会だが、年商10億円未満の企業向けビジネスの比重は、01年度の34.5%から08年度は26.9%と年々低下している。ここでITプラットフォームを活用して新しいサービスを打ち出せば、中小ユーザーを引きつけることができるはずだ。