東芝や新日本石油などの“異業種参入”が続く太陽電池ビジネス。これまで太陽電池メーカーが主役だったが、パネルの供給過剰・価格下落が進めば、システム全体を設計・設置する事業の収益性が高まりそうだ。

 太陽光発電の“主役”は長らくシャープや三洋電機などの太陽電池メーカーだった。そこへ最近、“異業種参入”が相次いでいる。

 1月5日、東芝が大規模太陽光発電システムの販売に名乗りを上げ、2015年度に2000億円の売上高を目指すと発表。続いて新日本石油も三洋電機と折半出資で薄膜型太陽電池の製造・販売会社を設立。2010年度に生産・販売を開始する。

 両社のターゲットは「メガソーラー」と呼ばれる1000kW級の大規模太陽光発電システムだ。欧州の太陽光発電先進国に加え、米国ではオバマ大統領が太陽光発電を強力に推進。日本も太陽光発電の導入量を2020年に現在の10倍にすることを決定し、既に電力10社が2020年度までに30カ所の大規模太陽光発電所を建設する計画を発表した。

 両社はこの成長市場を狙う。新日本石油と三洋電機による新会社、三洋ENEOSソーラーが製造する薄膜型太陽電池は大規模システムに向く。

問われるシステム構築力

 一方、東芝のアプローチは興味深い。太陽電池パネルは外部調達し、それらを組み上げ、制御ユニットなどとつなげる「システム・インテグレーター」として発電システム全体の構築で勝負する。

 東芝の戦略の裏には、太陽電池の調達価格が今後、大幅に下がり、買い手市場になるとの読みがあるはずだ。実際、世界的に太陽電池の増産計画が目白押しで、数年のうちに供給過剰に陥ると予測されている。

 東芝は大容量インバーターなど電力制御分野に強く、独自開発した高性能な二次電池の新工場も2010年秋に稼働させる。二次電池と太陽光発電システムを組み合わせることで、出力が不安定な太陽光発電所を電力系統に連系させる際の悪影響を抑えられるという。太陽光発電システム事業推進統括部の南昭彦参事は、「大規模なシステムになるほどこうしたノウハウが問われる」と言い、自らのビジネスモデルに自信を見せる。

 「パネル以外は自社で賄える。中でも二次電池は太陽光発電システムの要だと考えている。パネルは、建設地の特性などに合わせて最適なものを調達していく」(南参事)

 三洋ENEOSソーラーの湯原尚一郎副社長も、システム・インテグレーターが重要との見方で一致する。

 「インテグレーター機能を持たないと、ビジネスがパネルの供給で終わってしまう。欧州では、用地探しからファイナンスまで手掛けるインテグレーターの存在感が増している。パネル製造からインテグレーションまで、トータルに手掛けられるかどうかがカギになる」

 既に、伊藤忠商事がノルウェーやイタリア、ギリシャの太陽光発電システム・インテグレーターに相次ぎ出資するといった動きもある。太陽電池の需給バランス次第では、太陽電池ビジネスの主導権が、太陽電池メーカーからインテグレーターに移ることも十分考えられる。

表●太陽光発電を巡る最近の主な動き
表●太陽光発電を巡る最近の主な動き
出所:各社の発表資料(1月26日時点)