ACCESSは2月26日,携帯電話機向けの電子書籍作成ソフト「NetFront Book Builder」と電子書籍ビューアー「NetFront Book Viewer」を開発したと発表した。「NetFront Book Builder」はパソコンで稼働するソフトウエアである。書籍のテキストデータを取り込んで,ウィザードに従って操作を進めていくと,携帯電話機で閲覧できる形式の書籍データを作成できる。ユーザーは専用サイトで書籍を購入して書籍データをダウンロードする。あらかじめ携帯電話機にインストールしておいた「NetFront Book Viewer」を起動し,書籍を閲覧するという流れになる。早ければ3月下旬から,KDDIの携帯電話機向けに提供する。
電子書籍作成ソフトの開発にあたっては,「簡単に電子書籍データを作成できることを強く意識した」(メディアサービス事業部 事業部長の浦部洋一氏)と説明する。作成方法が難解だと,作成に時間がかかる,または作成できない課題に直面するためである。これは特に専任の担当者を置けない中堅・中小の出版社に顕著だという。「電子書籍の普及のためには,魅力的な書籍を持つ中堅・中小の出版社に参加してもらうことが不可欠だと考えている」(浦部氏)。
誰でも簡単に作成できるように,電子書籍作成ソフトはウィザード形式で作業を進められるようにした。また,豊富な機能を搭載したいところを,あえてそぎ落とした。例えば,ページをめくるときに演出効果を付ける設定ができるようにしようと考えたが,「リッチな機能を利用するかしないかを細かく設定させるのは,電子書籍作成者の負荷が高いと考え,シンプルにページがめくれる動きだけに絞った」(メディアサービス事業部 係長 の田中俊次氏)。
「できる限りシンプルに」という発想は電子書籍ビューアーにも生かされている。KDDIのサイトから入手できる携帯電話機向けのビューアーは他メーカー製が2種類あるが,「ほかのビューアーよりも絶対に軽くしようという考えを持って開発した」(田中氏)。同社が計測したところ,プログラムのサイズは130Kバイト程度で,他社製の1/3~1/6程度になっているという。軽量な分,携帯電話機のメモリー容量不足になった場合も削除されにくいことを狙っている。
電子書籍の販売においては,書籍に料金を支払うことができ,携帯電話機の操作に慣れ親しんでいる主に20代~30代をターゲットとしている。販売サイトは,ACCESSと東京都書店商業組合が2008年10月に共同で開設した携帯電話機向け書店サイト「Booker's」を利用する。サイトでは,書店店員が作成したリコメンドの内容を掲載したり,店舗での売れ行きを反映したランキングを表示したりする。600を超える実際の店舗では,逆にサイトでの売り上げランキングに沿った書籍棚を設置したり,ポスターを掲示したりして,サイトの認知度向上を図る。メディアサービス事業部 出版プラットフォーム推進部 部長の梶井直史氏は,「身近な携帯電話機を通じて書籍に触れる機会を増やすことで,実際の書籍への興味を喚起することも狙いの一つ」と語る。