池田 輝久
エンパワー・ネットワーク プリンシパル

 多くの場合,稼働しているシステムが構築されるまでには,長い歴史がある。長期にわたって修正や機能追加,再構築を繰り返してきたシステムは,使っている技術や製品だけでも,様々な変遷がある。担当した技術者は,努力や格闘,成功と失敗を重ねてきているのだ。そうした過去の経緯を知っているのと知らないのとでは,将来のシステムの方向性を考えるのに,大きな差が出てくる。

 今運用しているシステムに採用されている技術や製品,担っている業務についての知識やスキルを備えているエンジニアは多いだろう。既に仕様の固まった開発案件をこなしたり,今あるシステムを運用したりするだけなら,それで十分かもしれない。しかし,現在のシステムの課題を把握し,将来のシステムの方向性を見極めて新しい提案をしていくためには,それだけでは不十分だ。幅広い知識が必要である。

 例えば,今運用しているシステムが,どういう経緯で開発されたか知っているだろうか。当時,なぜその製品/技術を採用したのか説明できるだろうか。そのシステムを,今,どういう部門のどういう人たちがどんなふうに利用しているか分かっているだろうか。プロのエンジニアは,そのような情報を仕入れる行動を欠かさない。

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