人材派遣と業務請負の使い分けが、ソフト開発で重要になっている。

 発注元に労働力を提供するサービスである派遣は、発注元の担当者が作業者を指揮命令下に置けることが特徴である。その代わりに国への事業の届け出や許可が必要であり、労働者搾取などを防ぐための禁止行為もある。

 例えば図1左1のように、B社がX社から派遣技術者を受け入れ、その人材をA社に派遣する「二重派遣」は、B社による搾取行為とみなされ、違法になる。X社は指示を出すA社と直接に派遣契約を結ぶ必要がある。

図1●派遣と請負の概要と特徴
図1●派遣と請負の概要と特徴
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 つまり、派遣業では発注元と作業の指揮命令者を必ず一致させる必要がある。技術者派遣を手掛けるパソナテックの加藤直樹取締役は「派遣契約には必ず発注元の責任者、作業の指揮命令者、作業場所を明記させたうえで、作業者から定期的に状況をヒアリングしている」と話す。ヒアリングの内容と契約書を照合すれば、二重派遣はまず防げるという。

 これに対し、業務請負は発注者に代わって業務を代行する商取引である。厚労省は「受注者が、自社の判断で業務の進め方や作業者の数、役割分担を決めるもの」(厚労省職業安定局需給調整事業課の鶴谷陽子課長補佐)と規定している。発注元から作業者への指揮命令があれば、請負には該当しないと判断する。厚労省が派遣と請負を区別する際の大原則である。

 図1右1のように、A社の担当者が、業務委託先であるC社やZ社の作業者に直接指示を出していると、請負を装った違法な人材派遣、つまり「偽装請負」と判断される可能性があるので注意が必要だ。

 請負には、多重下請けなどに対する規制がない。しかし偽装請負と判断されると取引構造の見直しを迫られる可能性がある。図1-2の例で、A社と下請けの取引を派遣契約に切り替える場合は、C社とZ社は派遣業の届け出を済ませたうえで、二重派遣を避けるためにA社と直接契約する必要がある。

 派遣と請負の区分に当たっては、商取引の契約形態や作業者の勤務地ではなく、指揮命令の有無に着目することにも留意したい。技術者の作業時間で対価を決める準委任契約のほか、「作業前に成果物への対価を決める一括請負契約であっても、作業者が発注者の指示を受けていれば請負の条件を満たさない」(鶴谷課長補佐)。また、作業者が自社の拠点で作業していても、発注者の指揮命令下にあれば偽装請負と判断される。