過去10年にわたり,通信事業者がコンテンツ業界や端末メーカーとのエコシステムを築き上げてきた。今後は,全く異なる業界のプレーヤが参入,通信事業者のように課金システムを構築する動きが加速する。

ゲーム機や専用端末も配信の対象に

 新規参入者としては,iPhoneを擁して参入してきたアップルが好例だ。モバイル・コンテンツ・フォーラム(MCF)の岸原事務局長は「アップル以外にも,携帯コンテンツのプラットフォームは増えていくだろう」という。コンテンツ・プロバイダから見れば,有力なプラットフォームを見抜く力が必要になる。

 MCFの岸原事務局長がiPhone以外の携帯コンテンツのプラットフォームとして注目するのはニンテンドーDSだ。「端末が普及しており,ユーザー・インタフェースも優れている。無線LAN以外の通信機能が加われば,コンテンツ・プロバイダにとって携帯電話と同等以上の条件が整う」。

 実際,任天堂は最新版の携帯ゲーム機「ニンテンドーDSi」にブラウザ・ソフトを標準搭載して,インターネットを利用しやすい環境を整えている。ソフトを流通させる基盤「ニンテンドーDSiショップ」も開設した。

 インターネット・サービス提供ベンチャーのはてなはこの動きをいち早く察知した。はてなは任天堂と組み,新サービス「うごメモはてな」などを展開。これを機に各種コンテンツ・サービスの提供は容易に想像がつく。

 普及台数や認知度から,プレイステーション・ポータブル(PSP)を擁するソニー・コンピュータエンタテインメントなどゲーム機メーカーが,MVNO(仮想移動体通信事業者)として名乗りを上げるかもしれないとの声は少なくない。

 ゲーム機以外にも,米アマゾン・ドットコムが提供する電子書籍専用端末「Kindle」なども注目されている。ここ数年,端末の価格低下は著しく,MVNOに規制緩和の追い風が吹いていることも,プラットフォームの多様化に拍車をかける。

不動産や鉄道会社も乗り出す

 経済産業省もプレーヤの多様化を促している。経済産業省が推進しているのが,空間をIT化して新しい事業を創造するためのプロジェクト「eクリエーション空間」である(図1)。ここで積極的なのは,地域に密着した不動産会社や鉄道会社だ。例えば東京急行電鉄は,自由が丘を舞台に二つの実証実験を進める。

図1●経済産業省が提唱する「eクリエーション空間」の実現方法<br>位置情報を記録するPI(place identifier)サーバーと,専用のPIモジュールを搭載したブラウザなどが必要になる。経産省の資料を基に作成。
図1●経済産業省が提唱する「eクリエーション空間」の実現方法
位置情報を記録するPI(place identifier)サーバーと,専用のPIモジュールを搭載したブラウザなどが必要になる。経産省の資料を基に作成。
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