米ガートナー CIOシニア バイス プレジデント ダーコ・ヘリック氏(写真:清水 盟貴)
米ガートナー CIOシニア バイス プレジデント ダーコ・ヘリック氏
(写真:清水 盟貴、以下同)

「世界恐慌まっただ中」とまでいわれる深刻な経済危機が続くなか、IT(情報技術)投資を見直す企業が続出している。業績の悪化を受け、コスト削減は待ったなしだが、闇雲にIT投資を削減したら企業競争力を落としてしまう。さらに、経済危機から脱した時に、他社から大きく遅れを取る可能性もある。米ガートナーのCIO(最高情報責任者)に、企業競争力を落とさない戦略的なIT投資削減のポイントについて聞いた。
(聞き手は多田 和市=コンピュータ・ネットワーク局 編集委員、「経営とIT新潮流」編集長)

「100年に1度」という世界的な金融・経済危機に直面し、外需依存度の高い企業を中心に日本企業の多くが業績悪化に苦しんでいます。IT投資を統括しているCIOは現在、IT投資やITコストの見直しに躍起になっています。サーバーの数を半分に減らしたり、棚卸しを実施して使っていないアプリケーションを削減したりしようとしています。米国の状況はどうですか。

 米国でも、日本と似たようなことが起きています。CIOはIT投資やコストの見直しに注力するようになっています。よりよい企業は、すべてのIT投資を一つひとつ精査して、項目ごとになぜこの投資が必要なのか、削減できないものか、見直しを進めています。

実行した年に効果や回収が見込めるIT投資に特化

 もっといい企業になりますと、CIOも含めて経営者はより戦略的に物事を考えようとするので、その予算項目の中で、より早くコスト削減できるもの、節約できるものはないかと探します。IT投資を実行した年に効果が出るものや、回収できるものがあれば、それに特化します。

 さらに、IT投資によって同じ年に売り上げが上がることが確実に見込める投資についても実行します。逆にわずかしか改善が見込めないIT投資や、あまり効果が期待できないもの、すぐに回収できそうにないIT投資については、削減の対象にします。

すぐに効果が出るコスト削減は、具体的にはどんなものですか? 例えば、サーバーの数を削減するようなことですか?

ダーコ・ヘリック氏(写真:清水 盟貴)

 コスト削減した結果、戦略的で重要なビジネスに影響を与えるようであれば問題です。影響を与えないコスト削減でなければなりません。賢いCIOは、コスト削減についてより戦略的に考えます。つまり、単にコストを削減するのではなく、より将来的なビジネスチャンスを生むことにつながるようなやり方を考えるはずです。

 例えば、サーバーの数を大幅に減らす場合にも、まずは既存のサーバーに「仮想化」の技術を導入したうえで数を減らして、現状のビジネスに影響を与えないように工夫します。お金を節約しつつ、サービスの質を落とさないようにするわけです。