サーバーとUPSを1対1の構成にする――確かにシステムの規模が極端に小さい場合や,事前に構成を全く計画できない場合ならやむを得ない。しかし,ラックが数本程度あり,10kW~20kW程度の消費電力の一般的なサーバー・ルームでは,サーバーの数だけUPSを用意すような構成にするべきではない。

 例えば,消費電力が700Wのサーバー1台に出力1000W程度のUPSを使うと,UPSの能力としては300W分のムダになる。こういったムダをサーバー・ルーム全体で合計していくと,結果的に数千Wになることも珍しくない。

 UPSには容量ごとにモデルがあり,接続する機器の消費電力によって選定できるようになっている。サーバー・ルームの計画からおおよそのシステム全体の規模が分かるのなら,その規模に合わせてUPSを購入すべきである。例えば,UPSの使用年数を5年と想定した場合,多くのケースで大容量のUPSを購入した方が,保守費用の差額からコストが安上がりになる(図1)。

図1●5年の保守費用をトータルに考えれば大容量のUPSを購入した方が安上がりになるケースが多い
図1●5年の保守費用をトータルに考えれば大容量のUPSを購入した方が安上がりになるケースが多い

モジュール型のUPSでシステム拡張に備える

 ただし,出力容量が固定のUPSを用意すると,システムの消費電力が増えたときに容量が足りなくなる可能性もある。あらかじめシステム全体の消費電力を含めた予測が不可欠だが,やはりよりベストな方法は,サーバーやシステムの拡張に合わせて拡張できるUPSを選択することだ。

 図2のように,モジュールごとに出力容量を増やせるUPSなら,サーバーやストレージといった機器の増設に合わせて拡張できる。また,モジュール式のUPSなら,予備のモジュールを準備しておくことで,N+1という冗長性も確保できる。

図2●モジュールごとに出力容量を拡張できるUPSならインフラの増設にも対応しやすい
図2●モジュールごとに出力容量を拡張できるUPSならインフラの増設にも対応しやすい

 システム群でUPSを分けると,システムの重要度に合わせてUPSを構成することも可能だ。例えば,最重要のシステムにはUPSを二重化し完全冗長とし,その他の重要システムはN+1の冗長構成にする。システム群でUPSを分けると,数台から十数台程度のラック単位でUPSの設計を行う「ゾーン・プロテクション」が可能になり,経済性,可用性,拡張性,保守性などを高められる。

APCジャパン
サービス事業部 ソリューションエンジニアリング部
ソリューションエンジニア 水口 浩之

前職は国産包装機械メーカーの海外事業部で技術営業として英語圏を担当。2006年よりAPCジャパンにて,ソリューションエンジニアとして顧客の希望するソリューションを設計している。UPS,ラック,空調,APCの全製品を組み合わせ,UPSとソフトウエアによるシャットダウン・システムの設計からラックの架台設計まで行う。ITインフラのスペシャリストを目指す。