山下淳一郎(やました じゅんいちろう)
株式会社アイ・エム・ジェイ 執行役員
Webマーケティングコンサルタント
山下淳一郎(やました じゅんいちろう) 1997年からインターネットに携わり,多くの大手企業のWebサイトを手がける。顧客視点に根ざされた彼の戦略立案は,多くのクライアントから高い評価を得ている。また,脳生理学理論を取り込んだ独自のマーケティングやWebサイトコーチングのセミナー講師としても活躍し,Web担当者が必要とするスキルをプログラムにした講座も手がけている。

 10年前は,ひとりのスペシャリストが企画し,設計し,デザインし,コーディングすれば,Webサイトを制作することは可能でした。そんなWebサイトも,現在では,組織で構築されていくべき対象となったことは,あえて言うまでもありません。そもそもWebサイトとは何でしょうか?

 Webサイトは,「市場に広く告げる」といった,単なる広告チャネルから,「個客の嗜好に応える」というワンツーワンマーケティングのプラットフォームに変化しました。Webサイトは,冠として企業名がついている以上,一部署の範疇に収まるものではありません。すなわち,Webサイトをどのような戦略で展開するのか,どのような成果をあげることを目的とするのかといった,目標達成に向けての戦略は,企業全体に関わるものとなりました。

プロジェクトを成功に導く人は誰?

 Webプロデューサー,Webディレクターは,ひとつのプロジェクトを統括して,成功に導く役目を担っているのが,一般的な通念となっています。近い将来,そのような存在を総称して,コミュニケーションデザイナーなどと呼ばれるようになるかもしれません。

 いずれにしても,企業の経営戦略を市場に落とし込んで,具体的な戦術へと展開する中心的な役割を担っている人を意味します。プロジェクトを成功に導くため,さまざまな分野の専門家たちをコラボレートさせ,目的達成に向けて,全体を推進していく成功の最終責任者は必須です。

プロジェクトチームを一枚岩にする

 ビジネスとして収益に直結し,有効に機能するWebサイトを構築するには,クライアントサイドと制作サイドが同じ目的・意識を持って,二人三脚でゴールを目指していくことが望まれます。プロジェクトとは,ひとつの目的を達成するために結成される臨時組織を意味するものですが,大別すると,戦略面を担う「ビジネス現場」と戦術面を担う「制作現場」が存在します。

 「ビジネス現場」では,クライアントとともに経営戦略をベースとしたプロジェクトの目的を明確にします。「制作現場」では,プロジェクトの目的を見据え,Webサイトの方向性や役割を策定して,仕様・設計・制作作業を行います。Webプロデューサー,Webディレクターには,この二つの現場を股にかけ,プロジェクトチーム全体の意思統一を図ることが望まれます。すべてのメンバーが能力を最大限に発揮でき,意思統一された活力あるチームをつくることが,プロジェクトを成功へと導きます。

優れたサービスは,優れた組織・優れた文化から生まれる

 市場は,「ひとりの卓越した仕事」を,「組織としての普通の仕事」にする事を求めます。労力の総和を超える力を生み出すことなくして,優れたサービスを提供し続けることなどできるはずがなく,また,顧客が個客になることすらありえません。

 事実,プロジェクトには成功もあれば,失敗もあります。しかし,成果を上げる人と上げない人の差は才能ではなく,習慣的な姿勢と,基礎的な方法を身に付けているかの差のみです。また,優れた組織は,あくまでも人の強みに焦点を合わせ,優れた文化は,できないことではなく,できることに焦点を合わせます。

 それは,組織全体の能力に絶えざる向上をもたらし,昨日の優れた仕事を今日の当然の仕事に変え,組織を強化していきます。しかし,組織は近代の発明であるがゆえに,私たち人間は,組織で働くということに対してまだ優れるに至っていません。チームに重要なのは,仲のよさではなく,労力の総和を超える力を生み出すことです。今後さらに,Webプロデューサー,Webディレクターには,その役目が求められていくのではないでしょうか。