企業が経営にかかわるリスクマネジメントを重視する現在,システム部門も広い視野でリスクマネジメントを考えることが求められる。

 出光興産、双日、ユニ・チャームの3社はいずれも、企業経営に危機をもたらすリスクを管理するリスクマネジメントにシステムを活用した事例だ。

 リスクマネジメントは企業にとって欠かせない経営課題になっている。帝国データバンクの調査では、07年度(08年3月期)にコンプライアンス違反が理由で法的整理になった負債額1000万円以上の企業は、06年度に比べ43.1%増の146社だった。

 これまでは経済的な要因によって、民事再生法の適用といった法的整理、いわゆる「倒産」に追い込まれる企業が多かった。現在では倒産の理由は経済環境に限らない。社内のコンプライアンス違反や消費者の声など、様々なリスクに対応しなければならないのだ()。

図●これからの企業経営にとって全社でリスクを共有し、管理できる仕組みが欠かせない
図●これからの企業経営にとって全社でリスクを共有し、管理できる仕組みが欠かせない
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 しかも個々のリスクだけでなく、社内外を問わず包括的にリスクを管理する仕組みが必要になる。「リスクは相互に関係している。関係を無視して、個別にリスク対応を進めると漏れが発生し、大きな事件につながる」と、ITとリスクマネジメントに詳しい日本大学商学部の堀江正之教授は指摘する。

 システム部門が個人情報の漏洩を防ぐためにセキュリティを強化しても、漏洩後の対応を考えていなければ企業の評判を落とす可能性がある。全社で横断的にリスクマネジメントの体制を作らなければ、企業を取り巻くリスクを十分に管理できない。

経営改善のチャンスになる

 一方、3社の事例からわかるように、リスクは経営改善のチャンスにもなりうる。双日の事業投資やユニ・チャームの顧客の声にはリスクもチャンスも含まれている。

 多岐にわたるリスクを集めて管理し、経営に有効な情報として役立てるには「システムの力が欠かせない」と東京海上日動リスクコンサルティングの指田朝久 情報グループ グループリーダーは話す。システムを利用して「リスクにかかわるデータを一元管理し、共有することが、企業全般のリスクマネジメントに求められているだろう」と指田グループリーダーはみる。

 システム部門にとってこれまで、リスクマネジメントと言えばシステム障害の防止やセキュリティの強化、BCP(事業継続計画)の策定など、システム自体を対象にしたものが中心だった。企業が経営にかかわるリスクマネジメントを重視する今、システム部門も広い視野でリスクマネジメントを考えることが求められそうだ。