米IP Devices代表
岸本 善一

 前回に引き続き,データセンターの性能を評価する指標について見ていこう。

 最近,注目されているのが,図1の(3)1ワットあたりの有益な出力(アウトプット)という評価項目だ。これまで,データセンターの性能評価の焦点は,消費電力やエネルギー効率に当たっていた。電力コストと電力の安定供給が最大の問題だからだ。しかし,ビジネスが成長してコンピューティング力への需要が増加した場合,確かに電力消費は増加するが,その分アウトプットも増加する。そこで1ワットあたりの有益な出力,すなわちビジネスの成長を勘案した指標が必要との考えが生まれてきた。

図1●データセンターの主な評価項目
図1●データセンターの主な評価項目
 現在は(1)電力消費と(2)エネルギー効率に焦点が当たっている。(3)のCUPSはデータセンターの処理能力を加味しようというもの。(4)は建物の省エネに着目したもの。このほか,施設からのCO2排出量や,機器の環境影響に注目する指標もある。

 こうした要請に応え,業界団体のGreen Gridは,新しい指標であるDCeP (Data Center energy Productivity)を示し,次のように定義した。

 DCeP= 有益な出力 / 全消費電力 

 問題は,分子の「有益な出力」の算出が困難なことだ。このため,それに代わるものとして,最近のホワイトペーパーでは8つの候補(指標)について言及している。それぞれについて各界からの意見を聞き,今後どれを有力にするかを決めるとのことである。

 ここでは,候補の7番目に挙げられているEmerson社の指標について述べる。図2は,データセンターにおけるアウトプットの伸びと,自動車の燃費の伸びを比較したものである。データセンターでは2002年から2007年の間に,電力消費1ワットあたりのアウトプットは8.4倍に伸びた。これに対して,自動車の燃費は同じ5年間に僅か2%%しか上昇していない。逆の見方をすると,もしデータセンターのコンピューティング需要が2007年に2002年のレベルだったとすると,電力消費は8分の1で済んだことになる。

図2●「有益な出力」を表す指標として注目されるCUPS
図2●「有益な出力」を表す指標として注目されるCUPS
 CUPS は,1ワットあたりの有益な出力としてEmerson社が定義しているもので,2002年時点でのサーバーの性能を100万CUPSとする。左の図は,CUPSが2002年から2007年の間に8.4倍に伸びたことを示している。右の図は,同期間に,1ガロン(3.79リットル)あたりの自動車の走行マイル(1マイルは1.609km),すなわち燃費の伸びが1.02倍にとどまったことを示している。出典:Emerson社。

 この結果は,Emerson社が定義したCUPS (Compute Units per Second) を使用して,Emerson社が概算したものだ。詳細は省略するが,2002年の段階でのサーバーの性能を100万CUPSと定義する。サーバーの総数,サーバーの性能,サーバーの消費電力を,2002年と2007年とで比較し,算定した。詳細はEmersonのホワイトペーパーを参照してほしい。