聖路加国際病院は2010年秋までに、院内に約1600台あるPCを、インテルのクライアント管理技術「vProテクノロジー」対応機に入れ替える(表1)。PCを運用管理する上で、電源のコントロールに苦慮してきたからだ。医療現場を支えるPCの管理には、深夜のデータ更新や、設置場所が分かりにくいPCの状態確認は不可欠である。2008年末までに500台のPCを入れ替えた。

表1●聖路加国際病院のPC運用管理業務の実態
会社名聖路加国際病院
PC台数約1600台
プラットフォーム化の手法新技術の採用
効果と主な取り組み500台のPCを電子カルテシステムと連携させ、診察時間外でも、マスターデータ更新や資産情報を確認できるようにした。次期電子カルテシステムはvPro対応を標準に設計する
利用している主な製品/サービスインテル「vProテクノロジー」、富士通の「HOPE/瞬快」「SystemWalker Software Delivery」

 同病院が2008年末までに入れ替えたPCの多くは、院内に配置する電子カルテシステムや受付業務用途の端末だ。それだけに、「PCはもはや基幹システムの一部。電源を管理者が自在にコントロールできなければ困る」と、同院・医療情報センターの嶋田元 副センター長は強調する。特に重要なのが、夜間に実施するマスターデータの更新である。

 マスターデータの内容が古いままになっていると、間違った薬のデータがシステムに登録されるなど、医療事故の原因になりかねない。データの更新は確実に実施しなければならないのだ。しかし、日中は診療や受付業務の最中であるため、PCに負荷を与えるデータ更新作業を実行するのは困難である。診察中にPCの動作が重くなったり、受付業務中にPCが動かなくなったりすることは、避けねばならない。

夜間の電子カルテデータ更新を自動化

 聖路加病院は、院内にある1600台のPCすべてを、富士通製運用管理ツール「SystemWalker Software Delivery」で管理してきた。セキュリティ対策や資産管理、不具合発生時の遠隔保守などを、医療情報センターの担当者がリモートで実施している。ハードやソフトの標準化も終えている。

 マスターデータ更新は現状、BIOSが持つ標準機能を使って、夜間にPCを自動起動する方法を採っている。起動したPCが自動的にマスターデータを更新する仕組みだ。ただ、実際の更新作業は週2回であるにもかかわらず、BIOSの機能では細かなスケジュールを設定できない。そのためにPCは毎日、無駄に起動しているのが実状だ。

 加えて、BIOSの自動設定だけでは、本当に時間通りにOSが起動したのか、マスターデータを更新できたのか、の確認が難しい。

図1●聖路加国際病院は、院内にあるPCの電源をvProテクノロジーでコントロールすることで、業務効率を高める
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 それを今後は、週に2日、必要な時だけに夜間のPC起動を可能にする(図1)。具体的には、vProが持つ機能の一つである「AMT(アクティブ・マネジメント・テクノロジー)」を利用し、スケジュールに沿ってPCを起動・終了させる。医療機関向け運用管理ツールの「HOPE/瞬快」が、vPro対応することが分かったため、本格的に利用することを決定した。