NTTドコモが2009年1月30日,法人向け新サービス「ビジネスmoperaコマンドダイレクト」を開始した。NTTドコモが持つ携帯電話端末の遠隔制御機能を,企業のシステムから直接利用できるサービスである。各企業の端末管理ポリシーに合わせた柔軟な運用が可能になる。

 NTTドコモの携帯電話サービスを一括契約している企業が,自社のポリシーに合わせて端末の機能を制限する場合,「ビジネスmoperaあんしんマネージャー」というサービスを使う必要があった。ところが,このサービスはNTTドコモが遠隔操作機能をパッケージにして提供しているため,企業の使い方に応じた柔軟な運用ができない。

 例えば,社員が属している部署に応じて携帯電話機内の設定を変更したい場合。会社の人事システムにある所属部署の情報を使えれば便利だが,ビジネスmoperaあんしんマネージャーには企業システムと連携する機能がない。企業の管理者はNTTドコモが用意するWebページにアクセスし,手動で設定しなければならない。

 ビジネスmoperaコマンドダイレクト(以下,コマンドダイレクト)は,こうした不便を解消する。NTTドコモの遠隔制御機能を企業システムから利用できる仕組みを用意するからだ。具体的には,電話帳操作,遠隔初期化,端末機能制限,iモード設定,ロック/利用中断,ブラウザ利用制限,メッセージ一斉同報の7種類の機能が利用できる。企業はこの仕組みを使って,自社システムから端末を遠隔操作できる。

インターネットを介して接続可能

 例えば,企業の人事システムとNTTドコモの電話帳操作を連携させれば「異動時に新しい部署のメンバーの電話番号を自動登録する」ことができる。入退室システムと端末機能の制限を組み合わせると「研究所に入ったらカメラ機能をオフする」,時間管理システムと端末ロック機能を連携させて「就業時だけ携帯電話のキー操作を許可する」ことも可能だ。

 コマンドダイレクトは企業のLANに設置する「接続サーバー」とNTTドコモのデータ・センターにある「サービス基盤」が連携して動作する(図1)。接続サーバーとサービス基盤の間はインターネットを介してつながり,XML(extensible markup language)を使って命令やデータのやり取りをする。通信はHTTPSで暗号化し,NTTドコモから契約企業に割り当てるIDとパスワードに相当する契約コードで認証する。

図1●ビジネスmoperaコマンドダイレクトのシステム構成<br>契約企業側ではNTTドコモが提供する「接続エンジン」をインストールしたサーバーを用意する。企業は接続エンジンのAPIを使って,業務アプリケーションを作る。
図1●ビジネスmoperaコマンドダイレクトのシステム構成
契約企業側ではNTTドコモが提供する「接続エンジン」をインストールしたサーバーを用意する。企業は接続エンジンのAPIを使って,業務アプリケーションを作る。
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 接続サーバーは企業が用意する。その実体は,オープンソースのアプリケーション・サーバー「Apache Tomcat」が動作するマシン上にNTTドコモが提供する「接続エンジン」と呼ぶミドルウエアを載せたものである。企業のシステム開発者は接続エンジンが提供するJavaのAPI(application programming interface)を使い,企業システムとコマンドダイレクトを連携させたアプリケーションをApache Tomcat上に構築する。

 ただし,企業システムとコマンドダイレクトが連携したアプリケーションを個別に開発するのは企業に負担がかかる。そこで現在,「コマンドダイレクトとの連携機能をあらかじめグループウエアのパッケージの中に取り込めないか,ソフトベンダーと交渉している」(NTTドコモ法人営業本部ソリューションビジネス部第三開発担当の小笠原光一担当部長)という。