屋内外に設置したディスプレイに広告を表示させるデジタルサイネージの本格導入へ向けた動きが活発になっている。デジタルサイネージを使った実証実験が各地で実施されており,さらにデジタルサイネージ関連の製品が続々登場している。

図1 タワーレコードが店舗に設置したデジタルサイネージ端末
図1
タワーレコードが店舗に設置したデジタルサイネージ端末
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 デジタルサイネージにおける最新の実証実験の一つとして,タワーレコードが2月20日から開始したものがある。タワーレコード渋谷店と新宿店に7インチの液晶ディスプレイを設置し,そこにナップスタージャパンの広告を配信している(図1)。これとは別に電通とNTTは2月16日から共同で実証実験を開始した。(1)商業施設,(2)鉄道車両内,(3)鉄道の駅,にそれぞれ設置した液晶ディスプレイを利用する大がかりな実験だ。(1)の商業施設としては,赤坂サカスや六本木ヒルズ,東京ミッドタウン,カレッタ汐留,ランキンランキン渋谷店,丸の内エリアにある丸の内ビジョンがある。(2)の鉄道車両としては東京急行電鉄(東急電鉄)の車両が対象となる。(3)の鉄道の駅は,東急電鉄の自由が丘駅と多摩川駅,西武鉄道の池袋駅,京浜急行電鉄の品川駅,羽田空港駅,横浜駅である。花王,サッポロビール,日本コカ・コーラ,NTT,日本マクドナルド,パナソニックといった著名な企業が広告主として名前を連ねる。

カメラで効果測定

 デジタルサイネージ関連の製品も相次いで市場に投入されている。特徴はどの製品も今後デジタルサイネージの市場を立ち上げていく上で広告主や広告代理店が直面するであろう課題を先取りし,製品の機能を充実させている点である。

 デジタルサイネージの課題の一つに,例えば広告効果を定量化できず分かりにくい,というものがある。そこでマクニカネットワークスは,デジタルサイネージを何人が見たのかを計測できるシステム「iCapture」の販売を2月4日に開始した。これはカメラと顔認識技術を搭載したソフトウエアを組み合わせたもので,デジタルサイネージに目線を合わせた人の数を計測する。デジタルサイネージの前を通った人の数も計測できるので,100人中10人が見たなど,視聴率を計算できる。また,男女の違いや年代の違いも識別できるので,「男性比率が高いので,配信する広告を男性向けに自動変更する」「子どもの閲覧数を計測し,その数に応じた報酬を広告主から受け取る」といった利用方法も可能になる。

クーポンと組み合わせて目を向けさせる

 端末を設置しても目を向けてもらえないという課題もある。そこに目を付けたソフィアモバイルは,ユーザーが自らデジタルサイネージの端末の前に来る仕組みを考え,2月5日から販売を始めた。それは,ディスプレイとおサイフケータイの読み取り機をセットにしたデジタルサイネージ端末と,携帯電話機に割り引きクーポンをダウンロードさせるシステムの組み合わせである。ユーザーが店舗で割り引きを受ける時は,携帯電話機をデジタルサイネージ端末にかざす。その際にディスプレイ部分にユーザーの目線が向くことを利用して,広告に目を向けさせることが可能になる。

 今後デジタルサイネージの普及に向けて,配信するコンテンツの表現方法を豊かにしたり高画質化したりする中で,データ量が多くなる可能性がある。デジタルサイネージの端末が多いと,コンテンツ配信サーバーに負荷がかかり配信に時間がかかる。そうした状況を想定した三菱電機は2月9日に,配信に時間がかからないデジタルサイネージ・システムを発表した。これはディスプレイと一緒に設置するコンテンツ受信端末が,ほかの受信端末にコンテンツをリレーで配信する仕組みを持っている。コンテンツ配信サーバーの負荷が軽減され,結果的に配信時間の短縮につながるという。