Microsoftのハイパーバイザ型の仮想化プラットフォームである「Hyper-V」は,Microsoftの仮想化製品をついにVMware ESX Serverと同じ土俵に乗せたという点で革新的な製品である。ただし,以前のMicrosoftの仮想化製品であるMicrosoft Virtual Server 2005を使い慣れたユーザーにとっては,Hyper-Vを使ってみると詳細な実装の面についてはほとんど変わってしまっているのを見て驚くかも知れない。変わらないのは仮想ハードディスク(VHD)フォーマットの使用だけと言ってもよいくらいだ。今回は,Hyper-Vの実装の詳細面を解説していこう。

(1)Hyper-Vのインストール:Hyper-VとVirtual Server 2005の主な違いとして最初に挙げておかなければならないのは,製品のインストール方法である。Virtual Server 2005はセットアップ・プログラムを実行してインストールするが,Hyper-VはWindows Server 2008の新しい役割(ロール),またはスタンドアロンのHyper-V Serverのいずれかとしてインストールする。どちらの場合も,Hyper-VはIntel VTまたはAMD-Vをサポートする64ビット・プロセッサを必要とする。

(2)Hyper-V マネージャ:次に気が付く大きな違いは,管理ツールがすべて変更されていることである。Virtual Server 2005はWebベースのインタフェースで管理するが,Hyper-VはHyper-Vマネージャで管理する。このHyper-VマネージャはMicrosoft管理コンソール (MMC)に組み込まれるツールであり,VMの作成,起動,停止などのすべての仮想マシン(VM)管理タスクをここで実行することになる。

(3)デフォルトのVMロケーション:VMを作成するとディスクのどこに格納されるのか,疑問に思うかも知れない。デフォルトでは,Hyper-VはVMをフォルダ「C:\ProgramData\Microsoft\Windows\Hyper-V\virtual machines」に格納する。このデフォルトのロケーションは,Hyper-VマネージャでHyper-Vホストを右クリックし,Hyper-Vの設定を選択して変更できる。

(4)仮想ハードディスク:VHD(.vhd)ファイルはVirtual Server 2005とHyper-Vの間で互換性がある。既存のVirtual Server 2005のVMをHyper-Vにインポートするには,必ずVMを新規作成し,既存の.vhdファイルを参照する。

(5)仮想マシン設定ファイル:VMの主要なコンポーネントの1つとして,仮想マシン設定ファイルがある。Virtual Server 2005は,VMの設定情報を検索およびコピーの容易なファイルに格納し,VM名に拡張子「.vmc」を付加した名前(MyVM.vmcなど)を付けて保存する。すべての製品はそれ以前の製品よりも不必要に複雑になるという不文律にしたがい,Hyper-VがVM設定情報をVirtual Machinesフォルダに保存する際のファイル名には,グローバル識別子(GUID)と拡張子「.xml」が使用される(00C5B017-B364-4F21-865A-28F47D8C530F.xmlなど)。

(6)スナップショット:VMwareのESX Serverと同様に,MicrosoftのHyper-Vでもスナップショットを取ることができる。これは稼働中のVMの状態を特定の時点で保存する機能である。スナップショットはGUIDを使用した名前で保存され,デフォルトでは同じGUID名のフォルダで保存される。GUID名のフォルダはVirtual Machinesフォルダにある。設定ファイルとは異なり,スナップショット・ファイルには拡張子は付加されない。

(7)統合コンポーネント:Hyper-Vの統合コンポーネントは,Virtual Server 2005のバーチャル・マシン追加機能と同様のものである。稼働中のVMにインストールされ,Hyper-Vの高いパフォーマンスを誇るVMBusアーキテクチャのメリットを生かすために必要な,特殊なドライバが含まれる。統合コンポーネントは,仮想マシン接続を使用し,アクション・メニューでInsert Integration Servicesセットアップ・ディスク・オプションを選択してインストールする。

(8)仮想ネットワーク・マネージャ:Hyper-V VMでネットワーク機能を利用するには,少なくとも一度仮想ネットワーク・マネージャを実行する必要がある。これにより,ホストのネットワーク・インタフェース(NIC)に接続する外部ネットワーク,VMのNICおよび外部ホストに接続する内部ネットワーク,VMにのみ接続するプライベート・ネットワークが作成される。仮想ネットワーク・マネージャは,Hyper-Vマネージャのタスク・ペインから起動される。

(9)仮想ハードディスクの編集ウィザード:仮想ハードディスクの編集ウィザードも,Hyper-Vマネージャのタスク・ペインから起動される。VMのVHDを圧縮し,Dynamic(容量可変)VHDとFixed(容量固定)VHDの間で変換を行い,既存のVHDのサイズを拡大する。

(10)Hyper-Vサービス:最後に,Hyper-Vとして管理されるサービスには実際は3種類ある。Hyper-Vイメージ管理サービス,Hyper-Vネットワーク管理サービス,Hyper-V仮想マシン管理サービスである。Hyper-Vサービスは,管理ツールのサービス・メニュー・オプションを使用して管理する。