写真1●米chumby Industries社のCEOであるSteve Tomlin氏
写真1●米chumby Industries社のCEOであるSteve Tomlin氏

 2009年1月に,米chumby Industries社のCEOであるSteve Tomlin氏(写真1)にインタビューを打診したところ快諾頂きました。Steve氏が語るchumbyのすべてを全3回に分けて紹介します。今回は第2回です。

高坂 chumbyは,ユニークな機能をいくつも備えていますが,特徴の1つが「ハードもソフトもオープンソースとして公開している」点です。高機能なガジェットはいくつもありますが,その仕様のすべてを公開している機器は珍しい。思い切ってオープンソース化したことで,予想外の効果はありましたか?

Steve 私たちが3年前にchumbyの開発をスタートした際,「アルファギーク」と呼ばれる新しい物好きのハッカーを想定して製品の骨組みを設計しました。仕様をオープンソース化したことで,こうしたハッカー層に支持され,開発段階で多くの提案や協力を受けることができました。

 その次の段階で活躍してくれたのがフラッシュ・プログラマです。世界中には,クリエイティブなフラッシュ・プログラマがたくさんいます。ところが,彼らはこれまで,作成したフラッシュを広くあまねく配布するオープンなプラットホームを持っていませんでした。

 chumbyを使えば,誰でも自由にフラッシュ・プログラムを公開,配布できる。chumbyは,フラッシュ・プログラマにとってプラットホームそのものなのです。

 この「ハッカーの技術協力」と「フラッシュ・プログラマの参画」の2つがそろって初めてchumbyをコンシューマ・マーケットのメインストリームに押し上げることができたのです。

高坂 具体的にはどんな成果がありましたか?

Steve ハードとソフトの両面で,多くのハッカーがとても面白い利用方法を掘り起こしてくれました。

 あるハッカーは,chumbyにマウスとキーボードをつなげて本格的なLinux端末として使えるようにしていました。chumbyの画面データを外部モニターに高解像度で出力する改造をしたハッカーもいます(写真2)。中には,魚の水槽の裏側にchumbyのモニターを取り付けて,金魚を楽しませる奇想天外な使い方をした人までいました。「それでどうするの?」と言われると困ってしまいますが,商業目的ではない使い方から意外なアイデアが産まれているところが興味深いです。

写真2●chumbyの画面データを外部モニターに高解像度で出力した例
写真2●chumbyの画面データを外部モニターに高解像度で出力した例

 こうしたハードウエアのハッキングについては,当初の戦略ではあまり重視していませんでしたが,今後も仕様をオープンにしていきたいと思っています。