◆今回の注目NEWS◆

納税者番号導入を検討 自民PT初会合、社会保障にも活用(日本経済新聞、1月28日)

【ニュースの概要】日本経済新聞によると、自民党は2009年1月28日、「ICカードシステムに関するプロジェクトチーム」(村上誠一郎委員長)の初会合を開き、「納税者番号制度」の導入に向けた検討を始めたという。


◆このNEWSのツボ◆

 自民党が、納税者番号の検討を本格的に開始したそうである。しかも、「年金、医療など社会保障の負担と給付の情報も一元的に管理することで、国民の利便性向上と行政の効率化を図りたい」とのことである。

 他方、政府は、すでに社会保障関係に関しては、年金や健康保険、介護保険などの仕組みを一元管理するための「社会保障カード」交付の検討を開始している。

 筆者は、もともと社会保障カードの導入には、反対ではない(関連記事)。また、税制関係の電子手続きとの統合なども考えるべきではないかと思っている。

 e-Tax、ICカード内蔵免許証、住基カード、社会保障カード、そして納税カード…などなど。公的手続きだけでこれだけのカードが乱発されたのでは、セキュリティのための手続き、認証手続きを覚えるだけでも大変そうである。一見、住民サービスが向上するようで、使い勝手が悪く普及しない…という住基カードの失敗を繰り返してはならない。一貫した考え方の下、こうした公的な認証手続きが整理されていくのは悪いことではないと考える。

 他方、なんとなく、全体が拙速、未整理で進められている感も否めない。もともと、住基カードが導入されたときに、納税関係手続きとリンクさせることは、「納税者背番号制につながる」として、タブーのように扱われていた。また、住基カードが国民管理につながる…という批判も、今は影を潜めているが、多くのカードが連携するという話になると、再び盛り上がってくるのではないか。

 その当時と今で何が変わったのか? すでにネット上では、社会保障カードの必要性に対して疑義も唱えられている。これと納税者番号がリンクすることになると、いかにもメディアが好みそうなテーマでもあり、さらに議論は燃え上がるだろう。

 今日の技術を有効に活用していけば、利便性とセキュリティを両立した、納税・社会保障・その他の行政手続きをリンクさせた電子手続きの実現は、決して不可能ではない。ただ、そのためには、あらかじめ、「思想」と「論理」を十分に整理したうえで、有効に世間にアピールしていくということが、何よりも重要だと考えられる。方向性は悪くないと考えられるのだから、検討と導入のプロセスに十分に意を尽くすことが望まれる。

安延 申(やすのべ・しん)
フューチャーアーキテクト社長/COO,
スタンフォード日本センター理事
安延申 通商産業省(現 経済産業省)に勤務後,コンサルティング会社ヤス・クリエイトを興す。現在はフューチャーアーキテクト社長/COO,スタンフォード日本センター理事など,政策支援から経営やIT戦略のコンサルティングまで幅広い領域で活動する。