総務省は,第一種電気通信事業者に対して義務付けている相互接続のルール見直しに向けた作業を進めている。FTTH(ファイバー・ツー・ザ・ホーム)に関しては屋内配線の取り扱いが大きな焦点となりそうだ。

 接続ルール見直しの作業を開始するにあたり,総務省は2009年1月9日から2月9日までの1カ月間,相互接続のルールに関する提案募集を実施した。意見募集の際に公開した募集要項で総務省は,モバイル市場と固定ブロードバンド市場(FTTHを含む)に関する項目のほか,コンテンツ配信市場の活性化や,固定通信と移動通信の融合を見据えた接続ルールの在り方を検討項目として挙げている。また今回新たにコンテンツ配信市場の活性化を視野に,認証・課金などのプラットフォーム機能のアンバンドル化についても検討対象とする意向である。

 屋内配線の取り扱いについては,内閣府の規制改革会議が展開している「全国規模の規制改革要望」に対する各省庁からの回答(2009年1月下旬公表の再回答)の中においても,総務省は今後検討する項目として報告している。ここでは,KDDIがNTT東西地域会社のボトルネック設備に関する接続ルールとして,FTTHの開放を徹底するよう求めており,具体的に「戸建て住宅・集合住宅向け双方の屋内光ファイバーの指定電気通信設備化および転用のルール化」を主張している。これに対し総務省は「接続事業者から工事費などの水準に関する懸念や既設配線の転用ルールの整備を求める意見が示されている状況などを踏まえ,FTTH市場の公正競争環境の整備を図る観点から,FTTHの屋内配線の取扱いについて情報通信審議会に諮問することとしており,同審議会の審議を経た上で必要に応じ所要の措置を講じることを考えている」と回答した。

 現在FTTH回線の相互接続については,宅外までの配線は第一種指定電気通信設備として他社への開放義務が課せられているが,宅内配線部分についてはそうした指定がない。他事業者の宅内配線に接続してFTTHサービスを提供する場合,回線を敷設した事業者とその回線を利用する接続事業者がビジネスベースで条件を決めている。第一種指定電気通信設備の場合は事業者間で原価ベースで貸し出す義務があるが,宅内配線については工事原価に利益を上乗せした一般利用者と同じ料金が適用されているのが現状である。また,宅内配線の敷設事業者に工事を委託した際の無効派遣費用(利用者が不在で工事ができない場合に発生する費用)についても,原価が明示されず一般利用者と同じ料金が適用されている。

 さらに利用者が契約事業者を変更する場合に,先に設置した屋内配線を転用できないと,設置済みの屋内配線の撤去と新規屋内配線の敷設が必要になる。これは利用者への負担が大きいと同時に,利用者が契約事業者を変更しづらくなる「ロックイン効果」を生み出す原因にもなることから,電気通信事業者の一部から屋内配線の法的位置づけの確認や,料金水準の見直しを求める意見が示されているという。

 総務省は今後,提案募集に寄せられた提案を参考に,電気通信市場の環境変化に対応した接続ルールの在り方について,2009年2月下旬の情報通信審議会に諮問する予定である。