経営者にとって、情報システムは頭痛の種になりがちだ。業務に必須だが投資に見合った効果が出るとは限らない。ほかの設備投資に比べて専門的で難解でもある。

 野村総合研究所で約20年間勤務した後に、人材派遣大手スタッフサービスのCIO(最高情報責任者)を務め急成長を支えた著者が、ベンダーとユーザー両方の視点から、“システム屋”の思考回路と、上手な付き合い方を説く。

 第1回で定義した“システム屋”や、“経営者の狙い”といった話題に入る前に、情報システムがいかに企業の競争力を左右するかについて、改めて確認しておきたいと思います。

 世界的な経済危機の影響で企業業績が悪化するなかでも、コンビニエンスストア各社の業績は堅調です。コンビニ大手のセブン&アイ・ホールディングス、ローソン、ファミリーマートは軒並み、2009年2月期に過去最高益を更新する見通しです。

 コンビニ業態の競争力は、情報システム無しには維持できません。しかも、同じコンビニ業態でも競争力に格差があります。

 街の大きな交差点に、コンビニが向かい合わせに2つも3つも出店している、こんな光景を見たことはありませんか? 立地に差はなく、店舗面積もほぼ同じ。営業時間はみな24時間で、店員の質は甲乙つけがたく、品ぞろえの違いを発見することも困難です。

 しかし、よく知られているように、セブン&アイ傘下のセブン-イレブン・ジャパンが、他社を1歩も2歩もリードしています。セブンと2位以下の各社とは、店舗数、売上高など規模の面でも差がありますが、利益面ではより大きな差があります。何より驚くことは、客単価において5~10%の差があることです。(各社の開示情報によると、2009年2月期中間期のセブン-イレブンの客単価は618円、ローソンは590円、ファミリーマートは552円)

セブン-イレブンの客単価はなぜ高いのか?

 客単価とは、1人の買い物客の合計買い物金額の平均値であり、つまり「平均して1人がいくら買い物をするか」を表した指標です。

 私自身は、セブンを含め様々なコンビニで買い物をしますが、「セブンでは余計に買おう、そのほかでは少し控えよう」などと考えているわけではなく、いわば平等に接しているつもりです。缶コーヒーや雑誌を買おうと思えば、店を選ばず、一番手近なところに入ります。その時に、「あ、セブンだからチョコレートもついでに買おう」などとは思いません。

 おそらく、私以外の多くの消費者の場合も、多少は「セブン・ファン」がいるかもしれませんが、好きな店が近くになければ手近な他店を利用しているはずです。日々の買い物の際に意識して余計に買おう、控えようなどと考えている方はいないと想像します。

 しかし、客単価が違うということは、全店合計した1日の、延べ数百万人から1000万人の買い物客について、1人当たりの買い物合計金額に差があるということなのです。意識して余計に買ったり控えたりしている人が少数派だとするならば、意識せずに「買ってしまう」人がとても多いことを意味するはずです。

 この違いの裏に、情報システムの差があるといわれています。