Forrester Research, Inc.
ダンカン・ジョーンズ シニア・アナリスト

 多くの企業で、ソフトウエアライセンスの契約内容が意図された目的に合致していない状況が見受けられる。契約に不合理な使用制限や導入制限を課されている場合がある。「契約違反になる/ならない」の基準が不明確な場合もある。

 例えば、ソフトウエア提供会社が、一般的な文言でその会社のユニークなことを指していることがある。IBM製品を利用している大手金融機関では「コンカレントユーザー」の基準があったため同時に利用できるユーザー数を制限した。しかし実際にはデータベースサーバーに接続するセッション数のことを指していた。契約に陳腐化する用語を使っているという問題もある。仮想化などテクノロジーが変化しているが用語が放置されている。

 こうした背景からユーザー企業で予期しないソフトウエアライセンスのコストが発生し、会計監査のやり玉に上げられてしまうことがある。時には法的な争いにまで発展する。

 ソフトウエア提供会社の製品マネジャは、顧客が製品を利用することで得る価値を想定し、条件の基準を選択している。こうした基準は大きく4タイプに分けられるが、それぞれに利点と問題がある()。少なくとも企業側の担当者は、ライセンスをきちんと守るためにどういう基準なのかしっかりとチェックすべきだ。理想を言えば、偶発的なライセンスコストの上昇を防ぐため、基準を変更できるようにしておく。許諾内容を顧客の同意なしに変えられるよう文言を滑り込ませているところもあるので注意が必要だ。

図●4タイプのライセンス基準はユーザー企業に異なる利点と課題をもたらす
図●4タイプのライセンス基準はユーザー企業に異なる利点と課題をもたらす
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 交渉でよりよい契約の作成を推奨したい。ゼロ-サムゲームではない。

 まず、起こりうるシナリオをソフトウエア提供会社に説明し、あらかじめ条項に入れてもらうことだ。ある金融企業は購入したソフトウエアの使用を販売代理店にも許可したかったが、契約では制限されていた。しかしソフトウエア提供会社には何の悪影響もなかったので、説明し契約を書き換えてもらった。経済的に不利がなければ修正することがあるのだ。

 現在のライセンス契約を見直し、修正が必要かどうかの精査もすすめたい。ソフトウエア提供会社はお金がかかわらない限り議論を蒸し返すことを望まないが、「監査通知」が来てからでは遅い。ライセンスの潜在的な問題を把握しているユーザー企業の担当者は、修正を言い出せる有利な立場にいる。

◆本記事は,“Check Your Software License Agreement For These Common Flaws”を日経コンピュータ編集部で翻訳・構成したものです。