2009年は、多くのソフト開発会社が倒産する厳しい時代になるかもしれない。

 東京商工リサーチの調査によると、ソフト開発会社の倒産は07年の174件(負債639億5100万円)から、08年は249件(同1631億1900万円)と、件数で43%、負債で155%と急増している。

 今年1月に開催された情報サービス産業協会(JISA)の新年賀詞交換会のあいさつで、浜口友一会長は「十数年前のバブル崩壊時には、情報サービス産業から3分の1のソフト開発者がいなくなった」と述べた。かつてのような危機に見舞われるなら、現在のソフト開発者は約55万人だから、今後は40万人になる可能性すらあるわけだ。

 背景にあるのは、国内IT市場の縮小である。今までのような手作りシステム開発案件が激減している。大手ITベンダーがソフトの内製率を高めていることも、ソフト開発会社にとって痛手だ。NECは1月30日、2009年度内に約6000人に相当する国内外注分を削減すると発表している。さらに大手によるオフショア開発の加速は、下請けのソフト開発会社をますます厳しい状況にするだろう。調査会社のIDC Japanは、09年の国内IT市場を前年比1.7%のマイナスと予想している。

 ユーザー企業のIT投資が伸び悩んでいる点も追い討ちになる。金融危機だけでなく、IT化による効果に対して不満を抱いているためだ。09年1月末に野村総合研究所が発表した「経営戦略におけるITの位置づけに関する実態調査」によると、「十分に得られている」とIT活用を評価する企業(経営企画部門)はわずか6.8%である。同調査では「新商品・事業開発、海外進出、M&A(企業の統合・合併)など事業拡大や経営改革につながる施策では、十分に活用できていないという課題が鮮明に浮かび上がってきた」と分析している。

 しかもソフト開発会社には、内部統制への対応など法的な面から改革を迫られている。こうした経営環境の中で、ソフト開発会社はどうすべきだろうか。

 まずは「従来型ビジネスモデルは崩壊寸前」だということを認識するべきだ。大手ITベンダーを頂点とする、現行のシステム開発のピラミッド構造のままでは、国内のIT市場は再生できないと覚悟を決めなくてはならない。「下請けから脱皮するチャンス」と前向きにとらえ、将来の成長に向けた準備をしていく段階に来たと思えるかどうかにかかっている。

 「何でも請け負うことができます」「言われた通りのシステムを作ります」といった姿勢はもはや通用しない。これまでのビジネスモデルでは成長が見込めないことは以前から指摘されていたものの、多くのソフト開発会社は有効な策を打ち出せなかった。「いつか需要が回復する」と信じ、問題解決を先送りし、その場しのぎをしてきたのだろう。だが、SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)やクラウドコンピューティング環境でのIT活用の姿も見えてきた昨今、ユーザー企業ごとにシステムを開発する「一品開発」が激減する方向にあることは間違いない。

 ソフト開発会社の生き残り策は、アイデア次第でたくさんあるはずだ。重要なのは、新しい一歩を踏み出すことである。例えば人材不足を嘆く前に、自らオフシェア開発に取り組んでコスト削減に挑んだり、高い技術力を持つ海外技術者を採用したりする方法がある。国内にいる高度なスキルを持つシニア技術者を活用することも考えられる。

 複数のソフト開発会社で持ち株会社を設立して得意技を持つ企業群を形成する手法もある。この場合、各企業の総務や人事といった共通部門をまとめてシェアードサービスとして提供すれば、バックヤードの業務を効率化できるはずだ。浮いたコストをサービス商品の研究開発と人材育成の投資に振り向ければよい。

 有力ソフト開発会社の中には危機感を強め、新しいビジネスに取り組み始めたところもある。これまでのやり方を見直すことが生き残るための方策になる、と認識しているのだ。